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パートタイム・有期雇用労働法とは? 全体像と企業が取り組む事項

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 パートタイム・有期雇用労働法とは、短時間労働者と有期雇用労働者の公正な待遇の実現を目的として、2021年4月1日から中小企業を含めて全面的に施行された法律です。本記事では、パートタイム・有期雇用労働法の基本として知っておきたい法律の全体像と、企業が講じる内容に関する各条文についてガイドします。

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必ずチェック! ポイント

  • パートタイム・有期雇用労働法とは、パート・アルバイト・契約社員など、短時間労働者と有期雇用労働者の「公正な待遇の実現」を目的とした法律。
  • 各条文では、労働条件の明示・説明義務や不合理な待遇差の禁止、賃金の決め方や教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、通常の労働者への転換など、企業に求められるさまざまな対応事項が定められている。
  • 通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との不合理な待遇および差別的取り扱いの禁止に関しては「同一労働同一賃金ガイドライン」も参照し、対応が必要。

関連サイト・資料

3分でチェック! パートタイム・有期雇用労働法

 パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)とは、パートタイム・有期雇用で働く方の雇用管理の改善などを通して、通常の労働者(正社員)とパートタイム労働者および有期雇用労働者(パート・アルバイト・契約社員など)との「均等・均衡待遇の確保」を推進する目的の法律です。

 少子高齢化が続き、社会情勢が変化している現代では、パートタイム労働者および有期雇用労働者(以下、両者をまとめて示す際は「パートタイム・有期雇用労働者」と表記)の重要性が増しています。パートタイム・有期雇用労働者はそれぞれ雇用全体の約4分の1を占めており、その存在感は大きいといえます。

 しかし、パートタイム・有期雇用労働者の待遇に目を向けると、働きや貢献に見合った処遇が確保されていないケースも少なくありません。こうした課題に対応するため、パートタイム・有期雇用労働法が制定されました。

 この法律では、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との不合理な待遇差を禁止するとともに、多様な雇用形態・就業形態で働く人々の雇用環境をより良くすることを目指しています。

パートタイム・有期雇用労働法の対象労働者

 パートタイム労働者および有期雇用労働者が対象です(以下、両者をまとめて示す際は「パートタイム・有期雇用労働者」と表記します)。

 パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の企業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者を指します。通常の労働者とは、いわゆる正社員のことで、期間の定めのない労働契約を締結してフルタイムで働く労働者のことです。

 また、有期雇用労働者とは、期間の定めのある労働契約を締結している労働者を指します

 パートタイム労働者や有期雇用労働者の呼び方は企業によってさまざまですが、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託社員」「契約社員」「臨時社員」「準社員」といった名称にかかわらず、上記のパートタイム・有期雇用労働者の条件に当てはまる方は対象となります。

各条文の重要ポイント

 パートタイム・有期雇用労働法では、企業が確認するべき内容が多岐にわたります。法律の全体像を押さえやすくするため、企業に求められる対応に関連した条文を抜粋してまとめました。

企業に求められる対応に関連した条文

企業に求められる対応に関連した条文を抜粋 条文の概要
6条 労働条件に関する文書の交付等 全てのパートタイム・有期雇用労働者の雇入れ時に「昇給」・「退職手当」・「賞与」の有無、「相談窓口」について文書の交付などにより明示しなければならない。
また、それ以外の事項についても、明示することを努力義務とする。
7条 就業規則の作成の手続 パートタイム労働者に係る就業規則の作成・変更の際に、パートタイム労働者の過半数代表と認められる者の意見を聴くことを努力義務とする。
8条 不合理な待遇の禁止 基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者との間に、職務の性質・目的に照らして不合理と認められる相違を設けることを禁止する。
※考え方・具体例は「同一労働同一賃金ガイドライン」を参照。
9条 同一労働同一賃金 通常の労働者と就業の実態(職務の内容と、職務の内容・配置の変更の範囲)が同じとされたパートタイム・有期雇用労働者は、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与、教育訓練や福利厚生施設、解雇など全ての待遇について差別的取扱いを禁止する。
10条 賃金 通常の労働者との均衡を考慮し、パートタイム・有期雇用労働者の職務内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案し、賃金を決定することを努力義務とする。
11条 教育訓練 通常の労働者に対して行う教育訓練の中で、職務の遂行に必要な能力を付与する目的のものは、職務内容が同じパートタイム・有期雇用労働者にも実施しなければならない。
ただし、パートタイム・有期雇用労働者が既にその職務に必要な能力を有している場合は除く。
12条 福利厚生施設 通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、パートタイム・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。
13条 通常の労働者への転換 通常の労働者への転換を推進するため、法で掲げられたいずれかの措置を講じる義務がある。
※措置の内容は、本記事後半「7:正社員へ転換する機会の提供(第13条)」を参照。
14条第1項・第2項 事業主が講ずる措置の内容等の説明(雇入れ時・説明を求められたとき)

全てのパートタイム・有期雇用労働者に対して次の説明を行う義務がある。

  • パートタイム・有期雇用労働者の雇入れ時に、雇用管理の改善に関する措置の内容
  • パートタイム・有期雇用労働者から求めがあった際、通常の労働者との間の待遇の相違の内容と理由、待遇決定にあたって考慮した事項

また、パートタイム・有期雇用労働者が上記を求めたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない

16条 相談のための体制の整備 パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関して、パートタイム・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制を整備しなければならない。
17条 短時間・有期雇用管理者 常時10人以上のパートタイム・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、短時間・有期雇用管理者の選任を努力義務とする。
22条 苦情の自主的解決 パートタイム・有期雇用労働者からの苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に苦情の処理を委ねるなど企業で自主的な解決を図ることを努力義務とする。

国・厚生労働省・都道府県労働局長などに関連する条文

企業に求められる対応に関連した条文を抜粋 条文の概要
15条 指針 厚生労働大臣は、企業が取り組むべき雇用管理の改善等に関する措置等に関して、適切で有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。
18条 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等

厚生労働大臣は、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善などを図るために必要があると認めるときは、 パートタイム・有期雇用労働者を雇用する企業に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

2 厚生労働大臣は、雇用管理の改善措置の規定に違反している企業に対して、勧告をしても、企業がこれに従わない場合は、その旨を公表することができる。

3 前2項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に 委任することができる。

19条 事業主等に対する援助 は、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進や、福祉の増進を図るために、企業等に対して、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談と助言、必要な援助を行うことができる。
24条 紛争の解決の援助 都道府県労働局長は、紛争の当事者の双方または一方から解決のための援助を求められた場合、当該紛争の当事者に対して必要な助言、指導または勧告ができる。
パートタイム・有期雇用労働者が紛争解決の援助を求めたことを理由に、企業がパートタイム・有期雇用労働者の解雇や不利益取扱いをすることを禁止する。
25条 調停の委任 都道府県労働局長は、紛争の当事者の双方または一方から調停申請があった場合、紛争解決のために必要があると認めるときは、「紛争調整委員会(均衡待遇調停会議)」に調停を行わせる。

特に押さえておきたい条文

 パートタイム・有期雇用労働法の条文すべてを熟知するのが難しい方もいるでしょう。ここでは、特に押さえておきたい条文を抜粋して補足説明します。

1:雇い入れ時の労働条件の明示(第6条第1項)

 パートタイム・有期雇用労働者を雇用したとき、または労働契約を更新したときは、次の事項を文書の交付により明示しなければなりません。

<必ず明示する事項>
「昇給の有無」「退職 手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つ

 同条に違反し、行政指導によっても改善がなければ、パートタイム・有期雇用労働者1人につき、契約ごとに10万円以下の過料対象となります。

2:雇用管理の改善措置の内容説明(第14条1項・2項・3項)

 パートタイム・有期雇用労働者を雇用したとき、または労働契約を更新したときは、速やかに実施する雇用管理改善の措置の内容を説明しなければなりません。

<雇用時・労働契約更新時に説明が必要な事項>

  • 不合理な待遇の禁止
  • 正社員と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者に対する差別的取り扱いの禁止
  • 賃金、教育訓練、福利厚生施設、正社員転換措置
(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要{:.pdf}」)
(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要」)
[画像クリックで拡大表示]

 また、パートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、次の事項を説明しなければなりません。なお、この説明を求めたパートタイム・有期雇用労働者に対して不利益取り扱いをすることは禁止されています。

<求めがあったときに説明が必要な事項>

  • 正社員との間にある、待遇の相違の内容と理由
  • 待遇を決める際に考慮した事項
(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要{:.pdf}」)
(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要」)
[画像クリックで拡大表示]

3:相談窓口の設置(第16条)

 企業は、パートタイム・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するための相談窓口等の体制を整備しなければなりません。苦情を含めた相談に応じる窓口であれば、名称、個人または組織であるかを問いません。

 相談窓口を設置した際は、雇い入れ時の文書交付などによる明示や、事業所内の掲示板などを通して周知することが望ましいです。

4:あらゆる待遇における不合理な待遇差の禁止(第8条、第9条)

 第8条、第9条では、いわゆる「同一労働同一賃金」に関する事項が定められています。パートタイム・有期雇用労働者と正社員の職務内容(業務の内容と責任の程度)、職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組みや運用など)、その他の事情のうち、待遇の性質と目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理な待遇差を禁止しています。

 また、正社員と職務の内容等が同一であるパートタイム・有期雇用労働者については、すべての差別的取り扱いを禁止しています。

 ただし、待遇差が不合理か否かは最終的に司法において判断されます。まずは厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」を参考にしながら、各社の労使で個別具体の事情を議論していくことが望ましいでしょう。

5:賃金・教育訓練の決定方法(第10条、第11条)

 基本給、賞与、役職手当等の決定は、パートタイム・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲や能力、経験等の客観的な基準に基づき決定することが努力義務となっています。さらに、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れた際に、賃金の説明を行うことは企業の義務でもあるので、留意が必要です。

 企業の主観や、「パートタイムは一律でいくら」といった決め方は望ましくありません。

 また、職務の内容が正社員と同じ場合は、職務の遂行に必要な能力を付与する教育訓練をパートタイム・有期雇用労働者にも実施しなければなりません。

6:福利厚生施設(第12条)

 パートタイム・有期雇用労働者にも、正社員と同様に福利厚生施設(給食施設・休憩室・更衣室)の利用機会を与えなくてはなりません。社員食堂のような給食施設を増改築することまでを求めていませんが、利用時間のルール変更や社内規定の変更等を行い、すべてのパートタイム・有期雇用労働者にも権利を与えることが重要です。

7:正社員へ転換する機会の提供(第13条)

 通常の労働者への転換を推進するため、雇用するパートタイム・有期雇用労働者に対して次のいずれかの措置を講じなくてはなりません。

  • 通常の労働者を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパートタイム・有期雇用労働者に周知する
  • 通常の労働者のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパートタイム・有期雇用労働者にも応募する機会を与える
  • パートタイム・有期雇用労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
  • その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講じる

 ただし、措置の内容が周知されていないと実行力がありません。次の方法を参考に、パートタイム・有期雇用労働者への周知を促進しましょう。

(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要{:.pdf}」)
(出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要」)
[画像クリックで拡大表示]

公表・実施状況(令和4年・5年度実績)

 2021年度のパートタイム・有期雇用労働者総合実態調査によると、パートタイム・有期雇用労働者を雇用している企業は75.4%となっており、「1日の忙しい時間帯に対処するため」にパートタイム労働者を雇用している企業が多く見られました。また、有期雇用労働者の雇用理由は、「定年退職者の再雇用のため」が主な理由です。

 パートタイム・有期雇用労働法の施行後、雇い入れ時の説明や不合理な待遇差の禁止については認知が高く、全体の約7割が「知っている」と回答しました。

 一方、待遇に関する紛争が起きたときの対処法や、有期労働契約を通算5年超えた場合、労働者の申し込みによって無期雇用契約に転換できることなどの認知度は低い結果となりました。

 引き続き、法内容の周知・理解の支援が必要といえるでしょう。

相談窓口

 全国47都道府県にある「働き方改革推進支援センター」にて相談が可能です。

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 ※「同一労働同一賃金」の記事を公開予定です。

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この記事の著者

横内 さつき(ヨコウチ サツキ)

中小企業の採用コンサルタント/人事労務・金融など専門領域の編集者・ライターとして活動する複業フリーランス。パーソルキャリアで求人広告営業、人材系スタートアップにて子育て世代や外国籍向け人材事業を経験。生命保険やカフェ店長、Web制作会社など、異業種の経験も豊富に持つ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

内山 美央(ウチヤマ ミオ)

うちやま社会保険労務士事務所 代表。新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。人事ベンチャーにて勤怠管理システムの導入コンサルティング、大手イベント会社の人事部にて人事制度改革や労務DX推進に携わる。独立後は経験を活かし、IT導入やテレワーク・フレックスタイム制など、社員が働き続けたくなる会社づくりを支援。

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