大企業と同じリファラル採用ではダメ
自社の内定者や社員の友人・知人を紹介してもらい、エントリーにつなげるリファラル採用ですが、採用成果につながっている例はまだまだ少ない印象です。
大企業であれば社員が何千人・何万人とおり、また知名度も一定あるため(たとえ世間一般に知られていなくとも、その分野の人たちには有名なこともあります)、「誰か良い人紹介してください!」の一言だけで、何十人と紹介されることもありえます。
しかし、これと同じことを知名度も規模もない中小企業やベンチャー企業などが行っても、期待される成果にはつながりません。にもかかわらず、地方の製造業では工場や社員食堂の壁に「急募! お知り合いをぜひ紹介してください」というポスターが貼られている“だけ”の場合や、ITベンチャーなどではWeb上の社内掲示板に同様の文言が載っている“だけ”の場合などが見られます。
もちろん、これらもリファラル採用の一施策ではありますが、これ“だけ”ではどうやっても成果が出ません。社員にリファラル採用をやっていることを周知してあとは「待つだけ」であれば、それは「攻めの募集法」とはいえないでしょう。
ソーシャルグラフを描き、会ってみたい人を特定する
端的にいえば、知名度も規模もない会社が行うべき本気のリファラル採用は、もっと泥臭いものです。こちらから積極的に各社員が持つネットワーク(つながり)に接触していかなければなりません。そして、「特にこの社員から紹介してもらいたい」という社内ターゲットも絞るべきです。
具体的には、次のように進めます。
まず、友人・知人を紹介してもらいたい社員を選定します。自社で高い成果を挙げている社員か、高い従業員エンゲージメント(会社に対する絆や愛着)を持っている社員がよいでしょう。成果を上げている好業績社員は自社の事業・仕事について理解が深く、従業員エンゲージメントが高い社員は比較的進んで協力してくれるからです。
特に後者の社員として、内定者や新入社員(中途も含む)はおすすめです。多くの会社で新入社員の入社オリエンテーションの際に自社のリファラル採用について詳しく解説し、そのまま紹介依頼をしているのも同じ理由からでしょう。
好業績社員や内定者などを特定したら、1人ひとりと打ち合わせの時間を組んでください。全員に一斉に声がけすると当事者意識が薄れてしまいますので、必ず1人ひとりに面と向かって協力を願い出る必要があります。
打ち合わせの場ではまず、その人が持っている友人・知人のネットワーク(つながり)を可視化します。これを「ソーシャルグラフ」と呼びます。可視化するのは、たとえば新卒内定者の場合、「大学時代のアルバイト先の先輩・同僚・後輩」「部活やサークルの先輩、後輩」「ボランティア活動で一緒だった同期」「地元の幼馴染」などです。バイネームで洗い出すというよりも、その人が所属していたコミュニティには「どんな人が多かったか」「彼ら彼女らはいま何をしているのか」などを把握します。
そして、自社が求めている人材像に近いと感じた人物や、そういった人が多く所属していると思われるコミュニティを特定し、代表者に「差し支えなければつないでいただけませんか」と依頼します。