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データで見る従業員エンゲージメント<製造業編>

データで判明した「製造業界のエンゲージメントの低さ」 “管理部門 vs 現場”の解消が向上の鍵

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考察——エンゲージメントの低い企業では「戦略・目標の縦の伝達」ができていない

  1. 「会社基盤」に対する期待度が平均より高いことから、製造業界では自社製品に競争力やブランド力があり、製品や会社に愛着を持てるかどうかを重視する従業員が多いと考えられます。
  2. 「施設環境」に対する満足度が低いことは、製造業界は工場の労働環境が業務の生産性に直結していることが影響しているものと考えられます。
  3. 若手(20代・30代)のエンゲージメントが低いことから、若手が多く配属されている工場などの現場に勤務する従業員のエンゲージメントが低いと推察されます。
  4. エンゲージメントが高い企業は「理念戦略」に対する満足度が高いことから、製造業界では「理念戦略」の納得感を高める戦略・目標の伝達が重要であるといえます。
  5. エンゲージメントが高い企業の30代は「人的資源(人材の魅力)」に対する満足度が高く、現場でいっしょに働く同僚・先輩に魅力を感じている従業員が多いことが分かります。

 次図は、製造業界においてエンゲージメントに影響を及ぼしやすい項目のベスト5を抽出したものです。製造業界で働く人が何を重視し、組織に何を求めているのかを表したものだといえます。

[画像クリックで拡大表示]

 全体的に「上司」に関する項目が多く、中でも「上司からの情報発信」に関する項目が多く見られました。階層別に見ると、部長層では「戦略目標への納得感」「自社の戦略や方針の伝達」「戦略目標の発信と伝達」、課長層では「理念の発信と伝達」「全社的な連帯感」「階層間の意思疎通」といった項目とエンゲージメントの相関性が高いことが分かります。つまり、製造業界では、会社や上司による戦略・目標の発信や、階層間での情報共有がどの程度行われているのかという点が、エンゲージメントを左右する大きなポイントになるといえるでしょう。

 言い換えれば、エンゲージメントの高い企業では、戦略・目標の伝達が十分にできていると考えられます。反対に、エンゲージメントの低い企業ではこうした縦の連携ができておらず、「経営と現場の断絶」が起きていると推察されます。

「管理部門 vs 現場」の構造が生まれる理由とは

 製造業界は他業界に比べ、エンゲージメントがやや低い水準にあることが分かりました。特に、課長以下の階層で他業界と顕著な差が見られることから、「管理部門 vs 現場」の二項対立的な構造が生じていると推察されます。

 また、製造業界では「戦略・目標の伝達」に関する項目がエンゲージメントと相関性が高いことが分かりました。これは、製造業界の働き方に起因していると考えられます。製造業界では多くの従業員が現場(工場)勤務であり、顧客と直接対峙する機会がほとんどありません。そのため、現場の従業員は日々の業務がルーティン化する傾向にあり、全社の戦略・目標への意識が低い状態で働いているケースが多く見られるのです。

 加えて、本社と現場の距離が物理的に離れているため、経営や人事が「現場感」を捉えにくい傾向もあります。実際に、本社・現場間のコミュニケーション不足により、物理的な距離がそのまま心理的な距離へとつながることで両者の視界に「ズレ」を生んでいることが多々見受けられます。一方で、エンゲージメントの高い企業は、本社・現場間で円滑なコミュニケーションをとれているため、心理的にも近い距離にあり良好な組織状態につながっているのです。

 以上を踏まえると、製造業界のエンゲージメント向上では、階層間の情報連携がポイントになるといえるでしょう。そして、階層間の情報連携を担っているのは管理職であり、特に、部長・課長間の意思疎通は重要となってきます。なぜなら、会社の戦略・目標は経営陣から部長に伝達され、課長を通して現場に伝えられる構造となっているからです。

次のページ
製造業界におすすめのエンゲージメント向上対策

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この記事の著者

花岡 健太(ハナオカ ケンタ)

株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント モチベーションエンジニアリング研究所 研究員。東京大学農学部卒業後、大手損害保険会社を経て中途入社。従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」やコンサルティングを通じて、100社超の組織変革を支援。現在は、研究員としてデータ分析・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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