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対談《人事法令》| 法改正の戦略的な活用

労働基準法大改正 対談【後編】——重要なのはツールにすぎない法令・政策を経営や人事施策につなげること

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労基法改正はデータのより柔軟な運用を可能にする“規制緩和”の流れ

髙浪 データの重要性はよくいわれていますよね。現在、多くの企業ではすでに人事・勤怠・労務系のシステムが整備され、たとえばフレックスタイム制の利用率や勤務間インターバルの活用度などのデータも蓄積されています。

 ただ、「それでどうするの?」というところで止まっている印象があります。データはあっても、経営の意思決定に活かせる人材や体制がまだ整っていない。たとえば、「勤務間インターバル遵守率が90%を切ったら採用計画の見直し(増員)」や、「残業時間が基準を超えたら業務再設計レビューを管理職に指示する」など、数値に「自動的な意思決定のスイッチ」をつないでおく。こうしたルールを仕組みに組み込むなどの「介入施策」がある企業さまは稀だと思います。

松井 たしかに。統合報告書などで、労働時間や健康経営、育児支援といったデータを細かく開示している企業もありますが、それらは多くの場合「働き方改革」の枠にとどまり、人材戦略とは切り離されているように感じます。

 IT企業などでは、プロジェクトごとに必要なスキルを分析し、どう分業するかをマネジメントしている例もありますが、それも“プロジェクト管理”という枠内にとどまっていて、人材戦略とはまだ結び付いていないように見えます。

 最近ではパルスサーベイやバイタルサーベイといった試みも出てきましたが、現時点ではまだ試行的な段階で、広く定着しているとは言いがたいですね。

髙浪 AIやバイタルデータの活用については、EUでは「高リスク領域」と位置付けられ、厳格な管理が求められます。採用や人事判断の領域でも、ログ保管、バイアス監査、人の最終判断といったガイドラインが整備されつつあります。

 一方、日本では比較的自由度が高い分、企業ごとに「使い方の約束」をきちんと定めておく必要があります。データ利活用は便利な反面、透明性と納得性をどう担保するかがますます重要になってきていると感じます。使えるから使うのではなく、「社員や候補者の信頼を得ながら使うには何が必要か」という視点を、もっと積極的に持ち込んでよいのではないでしょうか。

松井 たしかに、日本の制度はEUに比べて、比較的自由に「試してみましょう」というスタンスが感じられます。もちろん、業界ごとに厳しい規制が存在するケースもありますが、全体としては“とにかく管理する”という姿勢ではない。今度の労基法改正も、全体を俯瞰すると、より柔軟な運用を可能にする“規制緩和”の流れだと捉えることができますね。

髙浪 そうですね。日本のビジネス文化は「制度ができてから動く」よりも「周囲の空気感を察知して先に動く」という側面が強いと感じています。たとえば人的資本経営もそうでしたが、ISO30414の枠組みや伊藤レポートを機に、「これをやらないと出遅れる」という雰囲気が作られると一気に取り組みが広がる。

 実際の制度議論を見ていると、「柔軟化」の流れと同時に、健康確保や可視化を強める方向にも進んでいます。たとえば、在宅勤務時のみなし労働時間制の導入や、フレックスタイム制の部分的な適用は柔軟化の例ですが、同時に、勤務間インターバル(原則11時間)や連続勤務の上限設定(例:13日以内)など、ルールの明確化や健康配慮の強化も提案されています。

 経営・人事としては、この二面性を見誤らず、どちらにも対応できる制度設計を進めておくことが大事だと思います。

松井 まさにそうですね。ダイバーシティやインクルージョンを掲げていても、上場企業の多くでは「育てたい人材像」に大きな差がない。結局、画一的な定義のまま“人的資本情報”を開示してしまっているのが現状です。

髙浪 他にも「本来、人は何時間働くのが健全なのか」といった問いを、もっと科学的に立ててもいいと思います。日本では「1日8時間、週40時間」が当たり前のように語られますが、本当にその働き方が1人ひとりにとって健全なのか、もっと問い直してもよい時期だと感じます。海外では勤務間インターバルやつながらない権利(Right to Disconnect)の法制化が進んでおり、たとえば「通知オフの時間帯」を就業規則で定めるような動きも出ています。「とにかく8時間働くこと」から、「価値を生み出すためにどの時間帯・どのペースで働くか」という発想への転換が求められているのではないでしょうか。

松井 スタートアップの中には、労働時間を完全にフレキシブルにしたり、週1時間だけ業務委託で関わる人がいたりと、実験的な制度を導入している事例も出てきています。まだ数は限られますが、むしろそうした企業ほど伸びている印象を受けます。

 私の実感としては、多様な働き方を実現できている企業は、経営者の「聞く力」がとても高い。命令型ではなく、現場の声を丁寧に拾って反映している。そこには、経営スタイルそのものの違いが如実に表れている気がします。トップのスタンス次第で、「働き方」は大きく変わる。その意味でも、これからの労使コミュニケーションのあり方は、ますます問われていきそうですね。

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労使コミュニケーションは対立前提から共創設計へ

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この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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