タレントマネジメントの実践内容とポイント
続いて六原氏は、同社でのタレントマネジメントの実践について、具体的な取り組みを語った。
SmartHRが本格的にタレントマネジメントを開始した2022~2023年には「差し迫った課題があった」という。組織の急拡大に人材の成長が追い付かず、上位・ミドルのマネジメントポジションが不足していたのだ。「1人では見切れないので、ここにもう1人マネージャーを置かなければ」といった消極的な配置も多かったという。
この問題を解決するために、キータレントの特定と育成が急務だと考えた同社では、VP、Director、Managerといった上位~ミドルマネジメントの3レイヤーを重要ポジションと定め、選抜・育成に注力しはじめた。
キータレントマネジメントは、次図のようなサイクルで実施した。ポストを定めてタレントの選出をしたのち、育成・任命をしていくというプロセスだ。

六原氏は、このキータレントマネジメント実践におけるポイントを、「将来の組織体制やポストの要件は、組織拡大の中でかなり早く変わる。この見直しを短期で行いつつ、バランスを取りながらタレントを選出・育成すること」と強調した。
では、キータレントの選出をどのように行うのか。まずは「可視化」のために、タレントに関する属性情報、評価、本人のキャリア希望を参照し、推薦者(上長)がタレントを選出する。その後、「タレント会議」と呼ばれる場で、推薦背景や育成計画について話し合い、その結果に基づいて選出される。
このときの人事の役割は、現場が推薦した候補者のパイプラインを見える化し、会社の成長に対して順調に育成が進んでいるか、選抜された人材に性別や属性の偏りがないか、といった客観的な評価を行うことだ。
選抜の次は育成のステップに進む。ここでは「育成を行うのは現場」という考え方に基づいて、人事は現場に育成計画やアクションプランを検討するためのガイドツールを提供。あくまで現場部署がタレント育成を進められるよう、⽀援を行っているという。
加えて、「VP・経営候補⼈材」「ミドルマネジメント」といったタレントプールごとに横断的な研修(SmartHR Talent Program)を実施。経営陣のほか外部講師も招いて、約半年間の集中研修を行っている。