急成長期の組織に必要なのは「共通言語」
——貴社は、21年3月は1230名だった従業員数が、25年3月には約3000名に増えています。この大規模な急成長を実現するために、大切にしてきたことを教えてください。
1つ挙げるとすれば、「カルチャーの浸透」です。
会社がより成長していくためには、中期経営計画で掲げた目標を、最短で効率よく達成していくことが重要です。そのためには、社員1人ひとりが同じ方向を向き、同じ価値観・判断軸で行動することが不可欠です。組織として力を発揮するには、誰もがラクスのカルチャーを理解し、体現する必要があります。

宮内 貴宏(みやうち たかひろ)氏
株式会社ラクス 取締役 兼 経営管理本部長
富士通や起業経験を経て、2013年にラクス入社。2023年より現職。人事・総務などを含む経営管理本部やコーポレートIT統括部といったバックオフィス部門を統括。
たとえば、全国優勝を目指す「部活」と、楽しく活動することを目的とした「サークル」とでは、そこで育まれるカルチャーがまったく違いますよね。会社も同じで、何を目指すかで文化が変わってくる。だからこそ、当社では高い目標を達成するため、カルチャーを「組織を同じ方向に進ませるための共通言語」として位置づけ、その浸透に戦略的に取り組んできました。
——今年は中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)の最終年度だと伺っています。これまでを振り返っていかがですか。
非常にやりがいの多い5年だったなと思います。
概ね計画通りに進む中で、2023年ごろ、計画を前倒しして採用を進めた時期がありました。インボイス制度や電子帳簿保存法の改正といった法要件を控え、「楽楽精算」や「楽楽明細」といったバックオフィス系の業務効率化サービスで多くの受注が発生することを見越したためです。
しかし、人を一気に採用したことで社内のオンボーディングが追いつかず、生産性が思うように上がらなくなってしまいました。
そこで一時的に採用を抑制し、オンボーディングや教育体制の立て直しを優先しました。仕組みを整え直すことで、再び安定的に人を採用できるようになり、結果的に組織全体の成長を持続させることにつながりました。
組織の課題は“生産性”に現れる マネジメントの数と質を重視した組織づくり
——そうした「組織の課題」はどのように把握しているのでしょうか。
生産性指標を、月次・四半期・半年といった単位でモニタリングしています。
我々のビジネスモデルでは、人員数の増加が売上に直結する側面があります。そのため、人が増えているのに受注が比例して伸びていない場合、生産性に問題があるのではと仮説を立てられます。もちろん、エンゲージメントやモチベーションといった要因もあるかもしれませんが、最終的にはそれも必ずPL(損益計算書)に表れてくるものです。各組織が目標に対してどのように進捗しているかを多面的にチェックしながら、問題の原因がどこにあるのかを俯瞰して見るようにしています。
——拡大が続くいま、組織づくりにおいて何が大切だと感じますか。
やはり、マネジメントの役割がきわめて重要だということです。ただ闇雲にメンバーを増やすだけでは、組織としての一体感や成果の再現性が失われてしまい、組織が崩壊しかねません。そのため当社では、マネージャーの数やマネジメントの品質を重視して組織運営を行ってきました。
具体的には、1人の課長が見る人数は10人前後が適正というレギュレーションを設け、適正なマネジメント単位を守るようにしています。さらに、社内からマネジメント人材を育てる仕組みや、中途入社のマネージャーが「ラクス流のマネジメント」を実践できるように、オンボーディングプログラムを整備するなど、現在も改善を重ねています。
現在はまだ、マネージャーの約7割が中途採用で、社内昇格は3割程度。今後は、育成スキームの強化をし、内部昇格の比率を増やしていきたいと考えています。