経営者・人事・広報が連携するポイント
採用広報を単独の部署や担当者だけで担おうとすると、どうしても視野が狭くなります。経営者・人事・広報の3者が連携し、それぞれの役割を果たすことで、はじめて「入社前から入社後まで一貫したストーリー」を描けるのです。

経営者の役割:旗印を示す
経営者が果たすべきは、「事業の意義」と「未来像」を語ることです。
候補者は単に仕事内容だけでなく、「この会社がどこに向かっているのか」を見ています。たとえば物流業であれば、「物流をインフラとして守る使命」「災害時に社会を支える誇り」といった大きなビジョンを経営者自らの言葉で発信することが、採用広報における最上位のメッセージになります。
人事の役割:現実を整理する
人事部門は、日々の業務内容やキャリアパスを正しく提示する責任を担います。
「入社3年後にはどんなスキルが得られるのか」「どのポジションに進む可能性があるのか」など、候補者が知りたいのは未来のリアルな姿です。数字や制度の実績(研修参加率、平均勤続年数、内部異動の実例など)をそろえることも、人事の大切な役割です。
広報の役割:翻訳して届ける
広報は、経営者のビジョンや人事が整理した制度を、そのまま伝えるのではなく「候補者に届く形」に翻訳します。
たとえば「社内公募制度」という仕組みを「20代で新規事業に挑戦した社員のストーリー」として記事化する。 「物流の社会的使命」を「被災地に食料を届ける現場の声」として動画にする。情報をストーリーやビジュアルに変換することで、はじめて候補者の心に届きます。
ありがちな失敗と改善の方向性
採用広報は、経営・人事・広報のどれか1つが欠けても機能しません。3者が連携しないと、次のような失敗が起こりがちです。
- 経営者が語らない → ビジョン不在のまま「制度紹介だけ」で終わり、候補者に響かない
- 人事だけで進める → 内部事情は詳しくても、外向きの言葉にならず、読み手に伝わらない
- 広報だけで進める → 「格好いいコピー」はできるが、実態と乖離して早期離職につながる
3者が役割を持ち寄ることで、制度と現場と未来が1本のストーリーでつながり、候補者に“ここで働く意味”を立体的に示すことが可能になるのです。
まとめ:採用広報の目的とは
採用広報の目的は、企業を「魅力的に見せる」ことではなく、候補者に「誤解なく伝える」ことです。事業モデルや業務内容を分かりやすく発信することは、応募を集めるための“釣り文句”ではなく、入社後の定着を左右する重要な要素です。
明日から取り組めるアクションはシンプルです。
- 経営者は「自社の事業を図解で説明できるか」を確認する
- 人事は「業務の1日の流れ」を文章や図で可視化してみる
- 広報は「社員の生の声」を記事や動画にして候補者に届ける
こうした積み重ねによって、採用広報は単なるPR活動を超え、事業と人材の“架け橋”として機能します。それは、応募者にとっても、入社後の社員にとっても「ここで働いて良かった」と思える環境づくりにつながるのです。