3. 要点解説
(1)偽装請負について
労働者派遣と請負の違いは次図のとおりです。ポイントは指揮命令関係です。派遣の場合は、派遣先が派遣労働者に対して指揮命令することが可能ですが、請負契約では注文主が請負業者の労働者に指揮命令はできません。
もし、請負形式の契約において、注文主と労働者との間に指揮命令関係がある場合は、労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法に違反する偽装請負となります。
(2)今回のケース
Z社の社員であるXらは、Y社の工場において、Y社社員である班長の指揮命令を受けて作業を行っていました。
具体的には、Xらは、Y社の班長から作業内容の変更が頻繁に指示され、Y社の正社員と同一の作業を渾然一体となって行っていました。
さらに、Xらの出勤簿はY社が管理し、残業についてもY社の職場長の指示で行われるなどが実態でした。
以上のとおり、今回のケースは「XらはY社の指揮命令下にあり、偽装請負の状態にあった」といえます。
こうしたことから、裁判所は、XらとY社との間には黙示の労働契約が成立していたと判断しました。

