若手起案の本イベント CHRO今井氏が「楽しそう!やろう」と即決した理由
2023年に昭和電工と旧日立化成が経営統合して誕生した同社。もとは異なる風土を持つ企業だったとは思えないほどのにぎわいと一体感があった本イベントは、階層別研修を担当していた若手社員からの発案だったという。
昨年の8月に階層別研修の担当者である新山覚士氏を含めた計3人で話し合いがスタート。秋ごろに上司や経営チームへプレゼンし、開催が決定した。そして、従業員へのアンケートなどを踏まえてコンテンツを用意。今年の夏ごろには各事務所への告知を本格化し、11月の開催にいたった。
取材に応じた今井氏は、本イベントのコンセプトを聞くと、「めっちゃ楽しそうじゃん! やろうよ!」とすぐに答えたという。「楽しく学ぶ」「自律的に学ぶ」というキーワードは同社が目指す学びの姿。従来の“やらされ感”のある階層別研修ではなく、学びたい人が学びたい講座を選んで受けてもらうというコンセプトが実施を決めたポイントだった。
「ただ、新しい催しは、最初は参加をせずに様子を見る人が多くなりがち。せっかくなら経営陣を巻き込み、全社をあげてPR活動しようと決めました」と今井氏は述べる。
それは、髙橋氏の年頭挨拶で紹介し、新山氏らは各地の事業所を回って説明するほどの徹底ぶりだ。同社の事業特性上、工場のラインは止められないし、多数の事業所が地方に点在している。考えられる障壁をできるだけ取り除き、全国の従業員に参加してもらうため、まずは本イベントの趣旨を理解してもらうことを重視したという。
特に、マネージャーによって参加できる/できないの判断が変わらないよう、ていねいに説明したと新山氏。「マネージャーに対する説明では、ただその企画の説明をするだけではなくて、部下に参加させることで、いかに自分のマネジメントが楽になるかという切り口で説明することを意識しました」と述べた。
研修の効果を出すために「楽しさ」にこだわる
本イベントはラーニングフェスの名のとおり、単なる社内交流会ではなく学習の機会だ。しかし、楽しいイベントにすることにはこだわったという。
「いわゆるエンゲージメントが高い状態というのは、生産性が高い。これは明らかに統計的に出ていて、レゾナックの企業文化としても、生産性を上げるためにも楽しい部分をちゃんとつくろうとしています。日本では、眉間にしわを寄せていないと真剣に仕事をしていないと思われがちですよね、そんな雰囲気を壊したいという想いもあって、新山さんには、お祭りとして楽しいイベントにしてほしいとお願いしました」(今井氏)
新山氏も、「本イベントにおいて『楽しい』は重要なキーワードです。こういった大規模な仕掛けや演出を学ぶ内容といっしょに提供できると、楽しいという感情といっしょに学びや気づきが本人にセットされやすく、研修の成果も高まるのではないかと考えました」と自身の考えを述べた。
楽しさと学びの両立は難しそうに思えるが、ラーニングフェスではどのようにバランスをとっているのだろう。そう尋ねられた今井氏は、「見ていたのは、会社が学んでほしいコンテンツが用意されているかどうかと自己変革を促せるような体験をつくれているか。たとえば、参加者には学んだことを職場で実践してもらい、振り返りまでできるようにしています。あくまでも、これは会社の投資です。だからしっかりと学びを持って帰ってください。その代わり、その場で楽しめる仕掛けは全部やりましょうという方針だった」と答えた。
「『研修ってお金になるのかな』とよく考えます。けれども、こういった楽しい研修やイベントの中で気づきがあったり、学びがあったり、人脈が形成されたり、わずかなきっかけでものすごいイノベーションが生まれ、ものすごい製品がつくれるかもしれない。それで、1億、2億、3億……と売り上げられたら、今回のイベントはペイすると信じているので、その点でもあまり迷いはなかったです」(新山氏)
当初はもう少し小さい規模感を想定していたが、経営陣のコミットに勇気をもらったことで、大きな形で実現できたと笑顔をのぞかせた新山氏。社内向けの大規模学習イベントという新しい学びの場は、若手社員の発案と経営層の迅速な後押しによって生まれた。今後も開催されつづけることを期待したい。


