コンディションとして何を捉えるか
個人のコンディションを考えるとき、「仕事」「体調」「人間関係」という3本柱で整理するとシンプルになります。組織においてパフォーマンスを発揮するためには、これらがそろっていることが重要だという考え方です。世界保健機関(WHO)が提唱する「健康」の定義は「身体的・精神的・社会的に良好な状態」であり、この3本柱はそれに対応する形になっています。従業員に持続的に成長・成果を発揮してもらうためには、「健康な」状態でいてもらうことが欠かせません。
個人の状態把握と聞くと、プライベートなことや細かい人間関係まで、その人にまつわるすべての情報を集めなければいけないのでは、と思われがちです。しかし、実際に必要なのは「会社や個人の成果・成長を阻害する要因」を特定することに尽きます。それ以上の状態把握は不要です。むしろ、情報を取りすぎることで信頼を損ねる可能性もあります。コンディションとして捉えるべき範囲は、成果や成長に直結するボトルネックに絞ることが基本です。
また、「仕事」「体調」「人間関係」の3本柱すべてを、常に同じ精度でモニタリングする必要はありません。組織のフェーズや課題によって、優先的に把握すべき柱は変わります。たとえば急成長中の組織では、業務負荷や役割の変化が先行して崩れることが多く、成熟期の組織では人間関係の凝縮や摩擦が重要になるケースもあります。つまり、まずは組織において、どのコンディションの柱が致命的なリスクとなりうるのかをピン留めしておくことが大切です。
それぞれの柱で捉える項目には、次のようなものがあります。
- 仕事(精神的健康):やりがい、能力発揮、達成感、負荷、モチベーションなど
- 体調(身体的健康):睡眠、疲労、疾病、ストレス反応など
- 人間関係(社会的健康):チーム内の信頼関係、孤立感、協力体制など
もちろん、この3本柱は明確に線引きできるものではありません。仕事のストレスが体調に影響することもあれば、人間関係の不和が仕事のモチベーションを下げることもあります。相互に影響し合うものだからこそ、あらかじめ整理しておくことで「今、どこを見にいくべきか」を判断しやすくなります。

