採用業務のAI活用率は世界1位! 一方でジュニア層の育成に不安
AIがHR業務に与える影響は大きく、日本企業では、特に人材管理と人材獲得(採用)での活用が目覚ましいことが判明した。日本企業の64%がAIを採用の意思決定補助に活用しており、これは世界中で最も高い数値であった。
また、AI活用により、6割以上の日本企業が採用の質が向上したと回答。マッチング精度の向上や採用までの時間短縮といったメリットがグローバル平均とほぼ同様に確認されている。
「しかし、AIによる業務の変革は、従業員のキャリア形成に深刻な影響を及ぼしていることも示唆されました」(西浦氏)
西浦氏は、特にジュニアレベルの職務がAIによって代替されているという事実に言及した。その結果、「下積み時代」がAIに取って代わられ、OJTによる学びの機会は今後減っていくだろうと述べた。
「これは、幹部職を育てる際のマイルストーンが変わり、結果としてリーダーの育成が困難になることを意味します。調査レポートによると、日本企業でもAIが業務の大部分を担うにつれ、新入社員が成長する機会が減少すること、それにより将来の有能なリーダーの供給源が縮小するだろうという懸念が生じています」(西浦氏)
これ裏付けるデータとして、72%の日本企業が「将来のリーダーの採用と育成が困難になっている」と回答し、同じく72%が「職場での学習・成長の機会が減少している」と答えている。
このリーダー育成の課題に対し、日本企業は組織全体でリスキリングやスキルアップに取り組む必要があるだろう。実際に、68%の日本企業が、機能別または組織全体のAIリスキル/スキルアップに投資していると回答した。
しかし、このリスキリングの取り組みにも障壁が存在する。西浦氏は、「施策を組織に落とし込もうとした際、従業員のモチベーションやエンゲージメントがないと浸透しない」と述べたうえで、リスキリングを進めるうえでの最大の課題に、53%もの日本企業が「従業員のAIに対する全体的な認識・関心が不足している」と回答していることに注目した。そのほか、「予算上の制約」(51%)や、「AI関連のリスキリングを提供する専門的なスタッフの不足」(48%)も、リスキリングの障害となっていることが分かった。

