「誰がリスキリングをリードし、責任を持つのか」が曖昧な日本
最後に西浦氏は、日本企業がAIを実装して運用する中で、ガバナンスと人材不足が課題であると述べた。特に日本では、AIに関する規制が経済産業省の「AI事業者ガイドライン」にとどまっている状況であるため、企業は「どこまでどう活用すれば問題ないのか」という判断が難しい状況にある。
調査レポートを見ても、次のようにAI規制への理解が不十分であることを示していた。
- 43%の日本企業が、AI関連の現地規制についてまったく詳しくないと回答した
- 58%の日本企業が、日本におけるAIガイドラインや規制は不明確で、混乱を招く、あるいは矛盾していると認識している
西浦氏は、この混乱は、個人情報保護法や著作権法といった既存の法律とのコンフリクト(衝突)が原因の1つだと示唆した。
また、企業内でのAIポリシーの策定状況も、初期段階にあることが分かった。従業員のAIツール使用について、強制力のある正式な社内ポリシーを定めている日本企業はわずか30%にとどまり、非公式なガイドラインのみを有している企業が41%、そして29%の組織は、内部方針やガイドラインを一切持っていないと回答している。
最後に西浦氏は、日本企業の深刻な問題として、リスキリング施策の責任体制の曖昧さを指摘。AIスキルを向上させるための部門横断的なチームを設置している企業は、日本企業ではわずか4パーセントときわめて少数派であったという。
西浦氏は、「この状況が『うちの会社で誰がリスキリングをリードしていくのか』という責任の不明確さを生み、組織の再構築の努力を妨げている」と述べ、この課題が日本企業の大多数に共通するものであるとまとめた。

