サーティファイは、「就職活動における生成AIの活用状況」を調査し、その結果の一部を公開した。
採用DXや人材獲得競争の激化を背景に、就職活動のオンライン化は急速に進み、現在ではWeb面接(オンライン面接)が主要な選考方法として広く定着している。その一方で、面接中に生成AIを参照しながら回答する行為が急速に一般化しつつあり、採用の公平性や公正な評価を著しく損なう可能性が指摘されはじめている。
同調査はこうした状況を受け、Web面接における生成AI利用の実態を把握するため、2024年卒業生から2027年卒業予定のオンライン就職活動経験者に対しアンケート調査を実施したという。
調査結果について、同社は以下のように述べている。
質問1:Web面接の準備で生成AIをどのように活用しましたか?(複数回答)N=418
調査対象418名のうち、生成AIを利用せずに面接準備を行った学生はわずか36%だった。実に64%が生成AIを用いて面接対策を行っていたことになり、すでに面接準備の主流がAI前提に移行している実態が浮き彫りになった。
質問2: 面接準備にはどのようなAIを活用しましたか?(複数回答)N=267
面接準備ではChatGPTの利用が最も多く、次点のGeminiとの差は100名以上と大きく開いていた。また、NotebookLMの利用も一定数見られ、学生が応募企業ごとに自身と企業の情報をAIに学習させ、企業別に最適化された模範回答を生成している様子がうかがえる。
質問3: 生成した資料は面接中にどのようにして見ましたか?(複数回答)N=267
面接準備で生成AIを利用した267名のうち、232名(86%)が事前に生成した資料を、実際の面接中に参照していた。特に、面接で使用している端末で閲覧したケースが最も多く、Web面接において生成AIを自然に参照する行為が広く浸透している実態が明確になった。
質問4:面接中にどのように生成AIに入力しましたか?(複数回答)N=418
面接官の質問内容を生成AIに直接音声認識させ、リアルタイムに回答例を生成していた学生は全体の5人に1人(22%)に上った。さらに、質問内容やキーワードを手動入力していた学生まで含めると、Web面接中にリアルタイムで生成AIから回答支援を受けていた学生は全体の45%に及んでおり、面接中の生成AI利用が想像を上回る水準に達していることが明らかになった。
質問5: 面接中に生成AIを利用した理由として最も強いものは?(複数回答)N=240
AIで生成した資料を面接中に閲覧したり、リアルタイム入力によって回答支援を受けた57%の学生(重複除外240名)に面接中に生成AIを利用した最も強い理由を尋ねたところ、「頭が真っ白になることを防ぐため」(35%)が最多。次いで「他の学生も使っているので、自分も使わないと不利になるため」(24%)が続いた。
この調査の結果を受けて、同社は次のように注意を発している。
「本調査は、Web面接における生成AI利用が既に一般化している状況を明らかにするものであり、コミュニケーション能力、カルチャーフィット、ヒューマンスキル などの判断がWeb面接では困難になるリスクが示されました。
さらに面接官の質問に含まれる企業情報やノウハウが生成AIに蓄積されることで、外部に流出し、レピュテーションリスク・コンプライアンスリスクへと発展する可能性も否定できません。
併せて、昨年実施した調査ではWebテストにおいても不正行為が蔓延している実態が明らかになっており、オンライン選考全体の公正性が揺らぎつつあることが示唆されます。
企業は、現状把握と適切な対策の検討を急ぐ必要があります」(サーティファイ)
調査概要
- 調査期間:2025年11月14日〜11月18日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査対象:オンライン就職活動経験者 (2024年卒業〜2027年卒業予定)
- 有効回答:418人
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