パルスサーベイ設計の基本
設問は「少数」が前提
パルスサーベイの設計を考える際、「何を聞くか」と同じくらい重要なのが、「どのくらいの負荷で、どれだけ回し続けられるか」です。設計の成否は、分析の精度以前に、運用を継続できるかどうかで決まります。
一方で、サーベイの設計そのものに人事のコストやリソースがかかることから、「せっかくやるなら多くのことを聞きたい」と、つい設問を盛り込みすぎてしまうケースも少なくありません。やりがい、負荷、評価、上司、キャリア、不満点……。その結果、設問数が増え、回答時間が長くなり、従業員の回答負荷が高まっていきます。
こうした状態が続くと、徐々に回答率が下がり、サーベイは“取っているだけの仕組み”になっていきます。回答する側から見ても、「答える負荷に見合う手応えが得られないもの」として受け止められ、形骸化してしまうのです。
パルスサーベイの前提は、「少数設問・高頻度」です。従業員の回答負荷を踏まえると、設問数は多くても3〜6問程度に抑えるのが、実務上は現実的なラインといえるでしょう。
設問の軸と形式
設問は多ければよいわけではありません。重要なのは、従業員の心理状態の「揺れ」を捉えられるかどうかです。前回も触れたとおり、個人のコンディションは「仕事」「体調」「人間関係」という3本柱で整理できます。そのため、パルスサーベイの設問軸も、基本的にはこの整理に沿って設計するとシンプルになります。
- 仕事:仕事へのやりがい・活力
- 体調:業務負荷や疲労感
- 人間関係:周囲との信頼関係・孤立感
たとえば、次のような設問が考えられます。
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- 仕事
- 「最近の仕事に、やりがいや手応えを感じていますか」
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- 体調
- 「最近の業務や負荷について、無理なく対応できていると感じていますか」
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- 人間関係
- 「職場で、安心して相談できる相手がいると感じていますか」
いずれも事実関係を問うものではなく、本人の感じ方をそのまま捉えることを意図した設問です。正確さを求めるよりも、「前回と比べてどう変わったか」を見にいくための問いとして設計します。
これらは、従業員の「主観」を端的に捉えるための最小セットです。もちろん、これらをさらに細かく分解し、網羅的に聞くことも可能です。しかしパルスサーベイでは、「変化が起きたときに、人事やマネジメントがすぐ気づけるか」という観点で、あえて優先順位を付けて設計することが重要になります。
設問形式としては、一般的な5段階尺度が扱いやすく、時系列での比較や分析にも向いています。自由記述も補助的な情報として有効ですが、毎回設けると回答負荷が高くなりがちです。必要なタイミングで意見を拾うためのツールとして用意する程度が、実務上はちょうどよいバランスといえるでしょう。
頻度設計は「回り続けるか」で決める
パルスサーベイの設計において、もう1つ重要な要素が「実施頻度」です。パルスサーベイは精密な測定を行うための仕組みではありません。重要なのは、変化に気づける頻度で、かつ無理なく回し続けられるかどうかです。
多くの組織では、隔週または月次が現実的な落としどころになります。変化をできるだけ早く捉えるという意味では、頻度は高いほうが望ましいのは事実です。ただし、その際に見落としてはならないのが「回答後のアクション」です。結果を見ても何も起きない状態が続くと、従業員は次第に「答えても意味がない」と感じるようになります。
頻度を上げるほど、結果の確認、フィードバック、対話や支援といった一連のプロセスを、そのサイクルの中で回し切る必要があります。高頻度でパルスサーベイを運用するためには、集計や分析だけでなく、それを受け止め、行動につなげるマネジメント体制が前提になります。こうした条件が整っていれば週次で回すことも可能ですが、現実的にはハードルが高い組織も少なくありません。
繰り返しになりますが、パルスサーベイは精密な分析を行うための仕組みではありません。従業員1人ひとりの小さな変化を拾い、対話や支援につなげるための“観測ツール”です。サーベイを機能させるためには、設計段階で完璧を目指すことよりも、無理なく回り続けられる形を選ぶことのほうが重要です。

