グローバル人材の可視化はなぜ難しいのか 人的資本開示を実現するHRプラットフォーム構築の考え方
まずはスモールスタートで価値を示す
グローバルHRデータプラットフォームは、一気に完成形を目指すよりも、段階的に構築する方が現実的です。最初からすべての地域、すべての人事領域、すべての指標を対象にすると、要件が複雑化し、プロジェクトが長期化しやすくなるため、たとえば、日本→中国→東南アジア・オセアニア→EMEA→北中南米のような形式で段階的に進めることが多いです。
まずは、経営上の優先度が高く、かつデータの整備可能性が高い領域から始めるのがよいと考えます。たとえば、グローバル従業員数、組織別人員、管理職比率、女性管理職比率、主要ポジション、後継者候補、離職率などです。これらを一定の品質で可視化し、経営や人事にとって有用なインサイトを提供できれば、HRデータプラットフォームの価値を示すことができます。
そのうえで、スキル情報、学習履歴、キャリア志向、エンゲージメント、パフォーマンス、報酬、採用などへ対象を拡張していくことができます。段階的に進めることで、データ品質や運用課題を確認しながら改善できます。また、各地域にとっても負担を抑えながら参加しやすくなります。
おわりに
最後に強調したいのは、人的資本経営や人材データ活用の目的は、人を単なる数字として管理することではないという点です。人材データの可視化は、単に開示指標を作成するためのものではありません。企業が保有する人材の量・質・配置状況を客観的に把握し、事業戦略と連動した人材ポートフォリオを設計するための基盤です。
どの地域にどのような人材がいるのか。どのような経験やスキルが不足しているのか。誰に次の挑戦機会を提供できるのか。どの組織でエンゲージメントや離職の課題があるのか。こうした問いに向き合うことで、企業はより実効性のある人材戦略を描くことができます。
人的資本開示も同様です。開示は外部への説明責任であると同時に、自社の人材戦略を見直す機会でもあります。指標を並べるだけではなく、その背景にある課題、打ち手、進捗を継続的に把握することが重要です。今後、CSRDをはじめとする国際的なサステナビリティ開示の要請は、企業に対してより一貫性があり、説明可能な人材データ管理を求めていくと考えられます。
そのためには、信頼できるデータ、共通の定義、適切なガバナンス、プライバシー保護、そして経営と人事が対話できるプラットフォームが必要です。グローバル人材の可視化と人的資本開示を実現するHRデータプラットフォームは、これからの企業にとって単なるIT基盤ではありません。人的資本経営を実行に移し、グローバルな開示要請にも対応するための重要な経営インフラです。
開示対応のためのプラットフォームではなく、企業の成長を支えるためのプラットフォーム。その視点でグローバルHRデータ基盤を構築していくことが、これからの時代にますます重要になると考えています。
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栗山 周也(クリヤマ シュウヤ)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 People Consulting / HR Transformation シニアマネージャー
外資系コンサルティングファームを経て現職。HR IT領域の専門家として、人事システムの構想策定や人事システム選定から、人事システムを活用したBPR、グローバ...
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