データに基づいて万全の人材配置を行ったはずなのに、突然の休職や離職を防げない。最新のAIによる配置機能や予測機能を使っているのに——。多くの企業・人事が抱えるこの問題に1つの答えを示したのが、イベント「HRzine Day 2026 Summer」に登壇した株式会社チームスピリットの小中原涼太氏だ。同氏は、従来のデータドリブン人事がうまくいかない理由を明かすとともに、AIと動的データを組み合わせて離職・休職の予兆を逃さない「人に寄り添う人事」の実践法を解説した。本稿はその模様を伝える。
タレントマネジメントシステムを入れても離職・休職を防げない本当の理由
タレントマネジメントシステムを導入して、経歴やスキル、適性検査などのデータをロジカルに分析し、最大のパフォーマンスを発揮できる人材配置を行ったにもかかわらず、ある日突然、「一身上の都合により……」と退職届を出されたり、メンタル不調を理由とした休職の申請を受け取ったりするケースは少なくない。人事が事態を把握したときには、本人の意思は固まっており、“時すでに遅し”であることも多い。
こうした早期離職・休職に伴う1人当たりの一般的な損失は、約350万円〜1400万円に相当するといわれている。突発的な空きポジションの補充にかかる直接的な損失だけでなく、残されたメンバーのモチベーション低下や業務負担増などの間接的な損失もあり、組織の健全性を担保するうえで看過できるものではない。
なぜこんなことに? データをどこかで読み間違えたのか? 答えはNOだ。「この根本的な原因は、データそのものにある」と小中原氏は見る。
入社時に提出された履歴書や半期ごとに行われる評価、あるいは年に1度の満足度調査。こうした「静的データ」は、冷え切った過去の記録だ。これだけに依存していると、今の従業員の心を正しく捉えることはできない。
メンタルの不調や離職の検討は、週単位や月単位で急速に深刻化する。1年前の静的データに、従業員からのSOSが含まれていることのほうが少ないだろう。次の満足度調査が行われるころには、すでに離職や退職の意思は固まっており、もはや引き留める術はなくなっている。日々の人間関係や急激な業務負荷の変動によるリアルタイムな心の変化は、静的データだけでは計り知れないのだ。
小中原 涼太(こなかはら りょうた)氏
株式会社チームスピリット Team Success Platform事業統括本部 営業本部 営業第二部 部長
大学卒業後、大手エレクトロニクス商社に入社し、半導体・電子部品の営業に従事。その後、人材業界を経てチームスピリットに参画。現在は営業チームの部長として、企業の生産性向上を支援する「TeamSpirit」の利用拡大を牽引している。また、勤怠DXや働き方の変革に関するセミナーにも多数登壇し、現場主導のタイムマネジメントの実現について発信を行っている。
昨今のタレントマネジメントシステムには、AIによる離職予測や最適な人員配置の機能が搭載されていることも多いが、AIを使っているから安心かといえば、そうではない。「AI分析にかけるデータの鮮度が保たれていなければ、導き出されるのは現場のリアルとかけ離れた“精度の低い予測”になってしまうことを忘れてはならない」と小中原氏は警鐘を鳴らす。
では、どんなデータがあればよいのだろうか。
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- この記事の著者
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野本 纏花(ノモト マドカ)
フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・セルフブランディ...
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丸毛 透(マルモ トオル)
インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。
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