13万人のセキュリティ人材を育成せよ
サイバーセキュリティ分野の人材不足が深刻化している。経済産業省が2016年に公開した「情報セキュリティ人材の不足数と将来推計結果」によると、同年時点でのセキュリティ人材は28万870人で、13万2060人が不足しているという。
日本にとってサイバーセキュリティ人材の育成は喫緊の課題だ。政府のサイバーセキュリティ戦略本部は「サイバーセキュリティ人材育成プログラム」を策定し、広域分野で活躍できる人材育成を検討し始めた。また、情報処理推進機構(IPA)も「産業サイバーセキュリティセンター」を設立し、産業分野も網羅できるセキュリティ人材の育成に取り組み始めている。
さらに、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)も2012年2月、「産学情報セキュリティ人材育成検討会」を立ち上げた。同検討会には、東京大学教授の江崎浩氏を筆頭に、大学関係者、企業などのセキュリティ有識者ら28名が名を連ねる。主な活動内容は、情報セキュリティ業界を支える人材育成に向けた検討と、その取り組みだ。
11月25日、東京都内において開催したセミナー「これからのIT人材のキャリアを考える ~サイバーセキュリティの視点から~」も、そうした人材育成活動の一環である。ITに興味がある大学生/若手社会人を対象に行われた同セミナーには、現在サイバーセキュリティの第一線で活躍するスペシャリストが登壇。パネルディスカッションでは、サイバーセキュリティ人材に必要なマインドや着眼点、そして、セキュリティスペシャリストのキャリアパスなどが多角的に紹介された。
パネルディスカッションに登壇したのは、内閣サイバーセキュリティセンター上席分析官/明治大学情報倫理研究所客員研究員の守屋英一氏、ソフトバンク・テクノロジー 脅威情報調査室 プリンシパル セキュリティ リサーチャーの辻 伸弘氏、リクルートテクノロジーズ サイバーセキュリティエンジニアリング部 執行役員 鴨志田昭輝氏、日本電気(NEC)セキュリティ事業推進室マネージャー高橋 豊氏の4名。なお、コーディネーターは東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江﨑 浩氏が務めた。
冒頭、登壇者は自身のキャリアを紹介した。
ソフトバンク・テクノロジーの辻氏は、脆弱性診や侵入テスト(ペネトレーションテスト)担当からセキュリティキャリアをスタートさせた。現在は最先端のサイバー脅威を研究しつつ、執筆や講演といった活動を通じて、サイバーセイュリティの重要性を説いている。
鴨志田氏の所属するリクルートテクノロジーズは、リクルートグループ全体のITインフラの運用を担っている。鴨志田氏が所属するサイバーセキュリティエンジニアリング部は、リクルートグループ全体のセキュリティ対策を専門に担当している部門だ。
NECの高橋氏は、システムエンジニアからキャリアをスタートさせ、業務の一環としてセキュリティに携わる中で、セキュリティ事業推進室に配属された。前出の鴨志田氏がユーザー企業としてセキュリティに携わっているのに対し、高橋氏は、セキュリティソリューションを提供するベンダー企業側の立場である。
なお、守屋氏は、このパネルディスカッション前に行った講演で自身のキャリアを紹介。2001年にインターネットセキュリティシステムズ(ISS)入社。2007年に日本IBMへ移り、セキュリティオペレーションセンター運用責任者、CSIRTフォレンジックアナリストを経て、現職。大学での講師やサイバーセキュリティに関する著述活動などを行っている。