今回の「人事データ活用入門」について(編集部)
本記事は、人材育成や組織開発などの支援を行う株式会社リクルートマネジメントソリューションズの「連載・コラム」コーナーで、2018年2月26日に公開されたこちらの記事を、同社のご協力によりIT人材ラボへ転載しているものです。
分散分析とt検定の利用場面の違い
人事データの分析では、「職種別の仕事満足度の比較」「役職別の仕事満足度の比較」「月別の労働時間の比較」などを行う場合に、3つ以上のグループや時点の差に着目した分析を行うことも多くあります。また、「職種別の仕事満足度を、さらに役職別に比較」のように、複数の切り口を組み合わせて差の分析を行うこともあります。
このようなときに、グループ間や時点間の「差の有無」を確認するための方法が、「分散分析」です。t検定との比較は、図表1のとおりです。
なお、分散分析では、比較を行う際の切り口を「要因」といいます。よって、切り口が「職種別比較」のように1つであれば「一要因の分散分析」「職種別かつ役職別比較」のように2つであれば「二要因の分散分析」といいます。それぞれ、「一元配置の分散分析」「二元配置の分散分析」といわれることもあります。
また、分散分析には、t検定同様、異なる複数のグループの差を比較する「対応のない分散分析」と、同一の人物・職場などの複数時点の差を比較する「対応のある分散分析」があります。
今回は、「職種別の仕事満足度の比較」というケースを例にして、「対応のない一要因の分散分析」についてご紹介します。
分散分析と多重比較をセットで用いる
では実際に、「営業職」「企画職」「スタッフ職」という「3つの職種別の仕事満足度の比較」の仕方をご説明します。
まず、3つの職種の比較をする場合、図表2のように、3つのパターンの「差」があります。
(1)~(3)の差のうち「いずれか」が統計的に有意か、すなわち「どこかに、差があるか」を確認するのが「分散分析」です。
しかし、分散分析では、(1)~(3)のうち「どこかに、差があるか」は分かっても、「どこの差が、統計的に有意か」、すなわち「どこに、差があるか」は分かりません。それを確認するためには、「多重比較」を行います。
このように、「3つ以上のグループの差の比較」の際には、図表3のようなステップで、分散分析と多重比較をセットで用います。