パネリスト
- 広木大地氏(株式会社レクター 取締役、『エンジニアリング組織論への招待』著者)
- 古川陽介氏(株式会社リクルートテクノロジーズ、Japan Node.js Association代表理事)
- 中原 伶氏(株式会社LOB CTO)
- 袖山 剛氏(BizteX株式会社 CTO)
モデレーター
- 竹林史貴氏(株式会社LOB CEO)
創業期こそ良いエンジニアを採用できるチャンス

竹林史貴氏(以下、竹林):最初のテーマは「初期採用」についてです。事業コンセプトも決まって、いよいよエンジニアも採用していこうというフェーズになったときに、エンジニア採用のために何をしたか、また当時人事がすでにいたか、社員にどう協力してもらったか、という話をしていただけますか。
袖山 剛氏(以下、袖山):弊社(BizteX)の初期メンバーは、アリエル・ネットワークからのリファラル採用でした。アリエル・ネットワークは会社合併によりワークスアプリケーションになったのですが、そのタイミングで同社を辞めた3名ほどに来てもらいました。
その後の人事では、元エンジニアで人事をずっと長いことされており、弊社代表の嶋田とグロービス時代からつながりのある方に、副業として来ていただいていました。ものすごく優秀な方で、結構恵まれていたスタートだったと思います。
竹林:かなりいいスタートだったようですね。
袖山:そうですね。正直、あまり困りませんでした。
竹林:伶くんはどうですか?
中原 伶氏(以下、中原):最初は僕含めて2~3名のエンジニアが竹林のリファラルで入ってきて、そのくらいに人事も1名入りました。そこから全社員を巻き込み、全員で採用候補を出し合いました。2チームのうち、どちらが多く人を呼べたかを競い合うという「リファラル戦争」もやりましたね。結果として5名ちょっと採用でき、うまくいったのかなという感じです。その後もエンジニアはリファラルベースで採用を続けています。
竹林:弊社(LOB)は広告事業者として後発だったというのと、守秘義務などもあり、大々的に「こういうことやってるぞ」と言いにくい環境だったということも、リファラルを行った理由です。
よく「人数がすごい増えているけど、リファラルでどういうことをやってるの?」と聞かれますが、「全社員で(リファラル採用を)やることが当たり前」という空気を作るようにしていました。僕らのやるミッションとか、社風とかにすごく共感してくれる人じゃないと、そもそも採用しない。それに、そういう人たちはリファラル採用に協力してくれやすい、という教訓はあると思います。

2010年4月にサイバーエージェントに入社。2011年1月にスマホアドネットワークの株式会社AMoAdの立ち上げにジョイン後、同社の代表取締役に就任。当子会社のAppelevenを設立し、広告プロダクト開発に従事する。現在は株式会社LOBを設立し、CEOに就任。楽天株式会社の広告事業におけるテクノロジー部分を担う同社において、エンジニアドリブンな組織の構築に力を注いでいる。
広木大地氏(以下、広木):ベンチャー企業を立ち上げたいという方から「エンジニアを採用するにはどうすればいいか?」と相談を受けますが、正直、立ち上げ時はいい人が取れるチャンスだと僕は思っています。
ファンドというかVC(ベンチャーキャピタル)から相談を受けたときに、「エンジニアを1人も連れてこられない経営者に出資しても、あんまいいことないよ」という話をよくしています。ある程度技術が効いてきそうなビジネスをやろうとしているのに、経営メンバーとして1人も口説けないって、結構問題です。実際にそういう人たちと話してみると、確かに頭はいいのかもしれないけど、エンジニアの癇に障ることをめちゃくちゃする人が結構います。
創立初期は取締役の地位や生株、ストックオプションなど、いろんな材料でいいエンジニアを採用できるチャンスです。リファラルでちゃんと人を連れてこられるのが当たり前、というレベルの人を連れてくるのが重要かなと思います。

書籍『エンジニアリング組織論への招待』(技術評論社刊)著者。
1983年生まれ。筑波大学大学院を卒業後、2008年に新卒第1期として株式会社ミクシィに入社。同社のアーキテクトとして、技術戦略から組織構築などに携わる。同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、2015年退社。現在は、株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして、多数の会社の経営支援を行っている。
古川陽介氏(以下、古川):うちの会社(リクルートテクノロジーズ)は、そこまで初期っていうわけじゃないんですが、1つ挙げるとするなら、社員の巻き込みは結構頑張ってやっています。たとえば人事の方とかが、僕やエンジニアに「どういう人がほしいですか?」と頻繁にヒアリングに来たりとか、「こういうイベントをやりませんか」と提案したりとか。エンジニアがどういう人材を欲しているかというのは、やはり現場の人が一番分かっているので、広報と人事、人材獲得に関わる人たちがエンジニアと手を取り合って、新しいイベントをやっていこう、採用に活かしていこう、という活動は結構やっていますね。現場を上手く活かそうという意識があるのは、うちのいいところかなと思っています。
竹林:一方で、人事側やビジネスサイドの人間が、採用にエンジニアを巻き込んでいくことを「本業があるのに申し訳ないな」と思ってしまったり、あるいは、人事に協力してくれないエンジニアがいたりとか、そういうことは多くの会社であると思います。このあたりが(リクルートテクノロジーズで)うまく回っているのには、何か理由があるのですか?
古川:「エンジニアだからエンジニアの仕事だけしていたい」という人もいるにはいます。けれど、どちらかといえば、「結局は自分たちのためだから」とみんな思っていて。自分たちの仕事が楽になるのであれば、そこに協力を惜しまない理由はないかなと。

Japan Node.js Association代表理事。
大学院を卒業後、有名複合機メーカー、大手携帯ゲーム会社を経て、2016年5月リクルートテクノロジーズ入社。現在はグループマネージャーとしてメンバーの教育をはじめ、Webアプリ作成用のユーティリティツールやフレームワークの開発を担当。さらにJapan Node.js Association代表理事として、海外のカンファレンスでも登壇するほか、勉強会「東京Node学園」やNode.jsの祭典「東京Node学園祭」も運営。2018年11月よりBizteXの技術顧問にも就任。