パネリスト
- 曽和利光氏(株式会社人材研究所 代表取締役社長。書籍『人事と採用のセオリー』著者)
- 辻本祐佳氏(freee株式会社 カルチャー推進チーム マネージャー)
- 内藤誠人氏(ライフイズテック株式会社 人事・コーポレートブランド担当マネジャー)
- 薮田孝仁氏(株式会社SmartHR VP of Human resources・人事責任者)
モデレーター
- 松本利明氏(人事・戦略コンサルタント)
人員増加で課題になるのはやはりコミュニケーション
内藤誠人氏(以下、内藤):ライフイズテックという中学生、高校生向けにIT教育を展開している会社の人事を担当しております内藤です。私はもともとDeNAという会社に新卒として2005年に入社しまして、12年半在籍しました。前半の7年半くらいは事業を、後半の5年くらいは人事をやりまして、一昨年の12月に転職をしてライフイズテックに来ました。50人以下くらいの小さな会社なので、人事の仕事をメインとしながらも、事業開発をやったりマーケティングをやったりしています。
薮田孝仁氏(以下、藪田):SmartHRで人事の責任者をしている薮田と申します。弊社はクラウド人事労務ソフトを開発している会社で、会社の規模はちょうど100人くらいになったところです。私自身は去年12月に入社しました。SmartHRとZOZOとメルペイの中途面接を受けてみて、というブログを書いたんですが、見たことのある人はいますか? あ、結構いますね、ありがとうございます。そんなわけで、今日は改めてSmartHRの社内の様子や、入社して間もない私が感じている会社の魅力などをお話しできればと思っています。
辻本祐佳氏(以下、辻本):freee株式会社のカルチャー推進部に所属しております辻本と申します。前職は楽天で法務をやっていました。一昨年の夏にfreeeに移ってきて、最初はPRをやっていたのですが、去年4月に人事企画に移りました。今、在籍しているカルチャー推進部は去年7月に立ち上がった組織で、人事と総務の機能を持っています。なお、freeeは規模としては500名を超えてきたくらいです。その規模ならではの話ができればと思います。
曽和利光氏、松本利明氏はこのパネルディスカッションの前に行われたインタビュー(レポート記事)から引き続きの登壇のため、自己紹介がありませんでした(編集部)。
松本利明氏(以下、松本):それではディスカッションに入ります。まず最初に、人数が増加するフェーズにおいて組織構築で課題になったことは何ですか。
薮田:新しく入ってきた人が馴染むスピードというか、成果を出すまでスピードは、会社の人数が増えると変わってくると思います。その人たちが早く立ち上がれるように、昨年末から、新入社員のオンボードにかなり力を入れ始めました。40人くらいの規模だと特別な取り組みをしなくても、社員同士の意思疎通がしやすく、社内の雰囲気や仕事の内容、共通言語などを共有できると思うのですが、50人を超えてくるとそれが難しくなり始めます。そこの課題を解決する施策の1つとして、新入社員向けのオンボーディングプログラムを始めました。会社の雰囲気、共通言語、仕事の中身などをきちんと伝えるように気をつけています。次はミドルマネジメント層の不足が予想されるので、育成や採用に力を入れていきたいと思っています。
内藤:弊社は今、50人に満たないくらいなのですが、「会社っぽくなってきた」くらいのフェーズだと思っています。組織が出来上がってくると、権限委譲があったり役割が明確になってきたりしますが、それまでは役割が明文化されていない中で「優先度の高いことをできる人でどんどんやっていこうぜ」みたいな感じで仕事が進みます。そんな中、組織がしっかりしていく過程でコミュニケーションがある特定のところだけ強くなり、一方で希薄化するコミュニケーションラインが出てきたりすることがあります。コミュニケーションラインの明確化と、その太さが十分であるかどうかをしっかりモニタリングし、コミュニケーションが円滑に行われているかを見て行かなくてはいけないと思っています。
辻本:私は1年半前にfreeeに入って、社員番号は260番です。今は500番くらいまで来ているので倍々ゲームで社員が増えている状況です。先ほど「会社っぽくなった」という話がありましたが、弊社は最近「普通の会社っぽくなってきた」と社内で言われたりします。というのも、さまざまなバックグラウンドを持った人がいろいろなところから集まってくるようになって、去年くらいに課題として挙げられたのが“ダイバーシティ”です。freeeはダイバーシティを大事にするのですが、何もないのにダイバーシティだけ許容すると有象無象になりかねません。30人とか100人だったらみんな顔も分かるし、それぞれのキャラクターも分かります。しかし、500人規模になるとみんなのキャラクターを把握するのは難しいので「共通の価値観を持ちたいね」と。そこで、カルチャー推進部を新しく作ってカルチャーを社内に広め、採用の時にも積極的に打ち出すようにしています。さまざまなバックボーンや個性の人が集まるのは大歓迎ですが、価値観までがバラバラになるのは問題かもしれません。
曽和利光氏(以下、曽和):文化をマネジメントするのは一筋縄ではいかないと思います。ある程度成熟した人たちで構成されている会社であればできるかもしれませんが、実際にはなかなか理想どおりにはいかないですね。別の方法としてどういうやり方があるのかというと、マネジメント力を向上させるよりも、配置によって相性の合う人同士をつなげてあげるのです。そうすると、自然に振る舞っていれば物事はうまくいくという考え方があります。こういう配置というのは、人事の中でもあまり真剣にやっている人が少ない分野の1つです。社員のパーソナリティを可視化して、相性を組み合わせるといったことを真剣にやっているところからすると、普通の会社はほとんど何もしていないか、いい加減にやっているのです。真剣にやっていても何かに依拠しているのではなく、経験と勘に頼っています。ですから、配置にはまだ伸びしろがあると思います。