同調査は、経済状況や幸福度(個人の実感や親との比較)、仕事で成功する自信などを指標として算出。結果を国別・男女別・世代別で比較することで、世界の労働市場をより深く理解することを目的にしている。結果の算出に用いた要素は次のとおり。
社会経済および生活要因への期待感
- 今後1年の経済への展望
- 今後1年の個人的な経済状況
- クオリティオブライフ(幸福度)
- クオリティオブライフ(親との比較)
仕事関連のチャンスへの期待感
- 国内における仕事関連のチャンスの有無
- 今後1年の仕事における機会へのアクセスし易さ
- 成功するという自信
調査対象国は、北米(カナダ、米国)、南米(メキシコ、ブラジル)、中東(アラブ首長国連邦)、欧州(フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国)、アジアパシフィック(オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール)。
今回の調査結果について、リンクトインでは次のように分析している。
仕事や成功への自信のない日本
結果として総合では、日本は最下位を記録。22か国の中で最も自信がないことが明らかになった。平均指標より2割も低く、日本は海外諸国と比べて仕事や成功への自信が少なく、悲観的だとの結果が出ている。調査全体を通して、そもそも日本と世界との仕事に対する考え方に大きな隔たりがあり、日本が抱えている少子高齢化や男女格差の問題が色濃く反映されていることが見てとれる。
世界と比較して運頼みという傾向
「人生で成功するためには、何が重要だと思いますか?」という問いに対し、日本も世界同様に「一生懸命働くこと」が最上位に。以降、世界では「変化を喜んで許容すること」「ふさわしい人々とのつながりやネットワーク」と続くのに対し、唯一日本のみが「幸運」が重要であると回答している。これは日本で働く人が、外的要因任せの傾向を持つことを示すものだ。また、世界平均では3位である「ふさわしい人々とのつながり」は、日本では約半数に留まっていることから、一括新卒採用や終身雇用など、従来の日本型雇用がもつ社内を重視する現状も見られる。
生活に精神的な豊かさを求めるも愛情のある関係は関心低め
「良い生活に重要なものは何か?」という質問に対し、日本を含めた世界では「良好な健康状態」がトップ。また、世界では「経済的自立」が29%で続くのに対し、日本では「精神的な豊かさ」(世界との差は25%)となり、経済面よりも精神面を強く重要視していることが分かった。
日本の世代別にひも解いてみると、「健康」を重視しているのはジェネレーションX世代(39~54歳)、ベビーブーマー世代(55~65歳)が6割以上であるのに対し、38歳以下の若い世代は4割以下にとどまる。一方で、「精神的な豊かさ」の項目では最も若いジェネレーションZ世代(18~22歳)が45%となっています。同様に「優れたワークライフバランス」の項目においても、ジェネレーションZ世代は34%、ミレニアル世代(23~38歳)は24%であり、中高年よりも高い傾向にある。
なお、「愛情のある関係」が世界で3位、特に欧米では20%以上が「子ども」が幸福な生活に重要な要素であると回答しているのに対し、日本では「愛情のある関係」は6位(21%)、「子ども」が12%にとどまっていることから、日本では人生において恋愛や子どもなど「愛情のある関係」を持つことよりも他の項目を重視する傾向が見てとれ、少子化の現状を反映している。
仕事に“好き”は求めず、男性は対人関係も希薄
「どのような仕事を求めますか?」という質問に対し、世界平均の結果では「ワークライフバランスが優れている仕事」および「自分の大好きなことができる仕事」が同率1位で全体の4割を占めた。また、「家族や友達と充実した時間を過ごす」や「身体や精神をアクティブに維持する」も上位にランクしており、世界的にワークライフバランスを重要視していることが分かる。
一方、日本においては「好きなことができる仕事」は5位にとどまり、世界と比較すると仕事に「好きなこと」は求めていない傾向が見える。また、2位の「家族や友達と充実した時間を過ごす」では、男性28%・女性が41%となっており、女性のほうが人との関係を重要視していることも明らかになった。
仕事を得る機会の阻害要因、世界はお金、日本は年齢
仕事の機会を得るための阻害要因を調査したところ、世界の「財政的状況」に対し、日本では「年齢」が1位となった。これは、39歳以上の中高齢世代が平均を大きく押し上げていることが要因。年功序列や終身雇用制度が色濃く残る環境の中で、新たな挑戦がしにくいことに対する不安を反映した結果だと考えられる。
一方で「失敗に対する恐れと自信のなさ」は日本の38歳以下の若い世代に顕著であり、社会経験の少なさと自己肯定感の低さからくる将来への不安を強く持っていることがうかがえる。
なお、リンクトイン日本代表の村上臣氏は、今回の調査結果を踏まえて次のように述べている。
「新卒一括採用や終身雇用などの日本型雇用は崩壊しつつあり、年功序列的にキャリアアップができる時代は終わりを迎えます。今回の調査で大事なことは、世界ランキング最下位という結果ではありません。今の日本における仕事への価値観が、世界的にみるとかなり独特なものだという認識と、現状抱えている日本特有の問題に対して当事者意識を持たなくてはいけないことです。「人生で成功するために重要なこと」という質問で「運」が上位(2位)にランキングされたのは、日本のみです。大きな時代の変化の中で自分に合った働き方を得るためには、他人や会社任せではなく、本人が主体的に考え、動くことが重要です」(村上氏)