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人事労務事件簿 | #2

就業規則の解釈誤りなどで、うつ病解雇無効(東京地裁 平成22年3月24日)

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 「うつ病」は従業員の誰にも発症の可能性がある病気です。決してまれな病気ではありません。どの会社も、うつ病を発症した従業員にどう勤務してもらうか、どう休んでもらうかの規定を適正に定めておくべきでしょう。今回取り上げるのは、うつ病を発症し欠勤を重ねた教師に対して、学校側が不用意に退職勧奨し、その後解雇通告を行ったため、訴訟になったケースです。結果は解雇無効。企業側に対応や備えにどのような問題があったのでしょうか。

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1. 事件の概要

 ある学校法人(以下、被告)が経営する中高一貫校の教師(以下、原告)がうつ病を発症し、被告から解雇されたことにより争われた事件です。

 被告は原告に対して、うつ病が発症したことで、直ちに解雇したわけではなく、一定の配慮を行っていました。しかしながら、裁判では就業規則の解釈に誤りがあるなどの理由で、裁判所は解雇を無効と判断しました。

 主な概要は以下のとおりです。

●平成15年6月

 原告が担任をしていた高校3年生のクラスで、7人の生徒の携帯電話などが盗まれた事件が発生しました。原告は、生徒に対する事情聴収や保護者への対応などに追われたことにより、よく眠れず疲れが取れないなどの状態になり、うつ病を発症しました。この症状は、夏休み中は落ち着きましたが、2学期に再び悪化しました。

●平成15年9月~11月

 原告は、A内科医院でアトピー性皮膚炎の治療を受けていましたが、「ストレスが強くなると痒みが強くなる」などと訴えて、平成15年9月と10月にデパス(緩和な精神安定剤)の処方を受けました。その後、原告は、11月には心療内科Dクリニックを受診し、うつ病を発症しているとの診断を受けました。Dクリニックには、平成16年1月まで通院しました。

●平成16年度

 原告は、オーサービジット(人気作家が学校を訪れ、生徒たちに特別講義を行う企画)および修学旅行のイベントが続いたことで、うつ症状が悪化し、10月~12月まで再びDクリニックに通院して投薬治療を受けました。また、姉の知人の紹介を受けて、平成17年1月~平成20年6月まで、Cクリニックを受診しました。その後、CクリニックのA医師が原告の主治医となっています。

●平成17~18年度

 被告は、原告の体調に配慮して担任から外し、副担任としました。その後、原告は、以下のように欠勤を繰り返しました。

①平成18年1月に3日間欠勤しました。また、2月から3月にかけて断続的に29日間欠勤しました。また、E病院の「気管支喘息、1か月程度の自宅療養を要する」の診断書(2月16日付)を被告に提出しました。

②平成18年度の2学期には、9月に5日間欠勤し、それ以上の出勤が困難となり、A医師による「うつ状態にて、今後3か月間休業のうえ、静養加療を要する」旨の診断書を提出しました。それを受け、被告は原告を直ちに休職として扱いました。それから、原告はさらに12月、平成19年2月にも休業を3か月間延長する旨の診断書を提出して、それぞれ3か月間、休職期間を延長しました。

 なお、被告のF校医は、原告が最初の休職をした後の平成18年12月1日に、A医師に「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」を送付して、原告の治療経過や現状、今後の見通しなどについて情報提供などの依頼をしました。しかし、A医師は、原告の同意の有無が不明であるなどという理由でこれに回答せず、電話でも回答を断りました。

 また、被告は、原告からの問い合わせに対し、翌12月2日に就業規則を同封の上、休職期問は就業規則35条(2)に規定しているように1年以内(平成19年9月まで)であると通知しました。

<被告の就業規則>

(休職の事由)34条

 教職員が次の各号の一に該当するときは、休職を命じることができる。

 (1) 業務上の傷病により、欠勤が1年を経過したとき

 (2) 業務外の傷病により、欠勤が引続き90日を経過したとき

(休職の期問)35条

 前条による休職期間は、次の範囲において理事長が定める。

 (1) 前条の(1)の場合は、3年以内

 (2) 前条の(2)の場合は、1年以内

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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