リクルートマネジメントソリューションズは、役職を外れた経験(ポストオフ経験)のある50~64歳の会社員766名に対し、「ポストオフ経験に関する意識調査」を実施し、「ポストオフ前にすべき準備」や「ポストオフ後の適応感を高めるマネジメントのポイント」など、調査結果から見える実態について公表した。調査期間は2021年3月12~14日。
ポストオフ前と比較したときの現在の仕事の変化について、「賃金が減った」が82.8%、「周囲からの期待が下がった」が56.1%だった。他方、「自分で判断し、主体的に進める度合い」や「顧客満足や組織業績の向上への影響力」は変わらないとする人がそれぞれ50.4%、54.2%と半数以上だった。自由記述回答で、ポストオフによって失ったものと得たものを尋ねたところ、「給与」や「期待」「情報」が失われ、「時間」や「自由」「余裕」を得たという趣旨の回答が散見された。
ポストオフ前と比較して、ポストオフ後に選択率が大幅に高まる労働価値観は、「自分が楽しめる、面白いと思える」だった。ポストオフ後は、これまではさほど重視してこなかった自分の素直な感情に意識を向け、自分の感情と仕事を調和させていくという新しいキャリア局面が現れることが示唆される結果となった。
部長・課長のポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移を見ると、意欲・やる気が「変わらない」人が3割弱いる一方で、「一度下がった」人は6割近くにのぼり、その内訳として「下がったまま」は4割前後、「一度下がって上がった」は2割前後にとどまった。
ポストオフ後の適応が良好な人たちに特徴的なポストオフ前の準備は、「新しい知識・スキルや専門性を身に付ける」「権威を振りかざさない」「社内の人脈を広げる」だった。管理職業務以外の現場業務を遂行するための知識更新、役職者という立場を持ち出さないフラットな協働関係性の構築が、ポストオフ後の適応に役立つと考えられる。
現在の仕事への適応感(成果実感・居場所感・やる気・成長感など)を高める要因を、複数要因からの影響を比較検討できる分析方法である重回帰分析を用いて探ったところ、環境要因においては、上司マネジメント、インクルーシブな風土(誰の発言も真摯に受け止められ、独自の才能が生かされ、年齢によらず良い仕事が評価される)がポストオフ後の適応を促していた。
個人要因においては、強みや関心を生かしたり同僚と共感し助け合ったりといった本人行動が、ポストオフ後に成果を上げ、居場所を作り、活力を生み出すことにつながっていることが分かった。
同調査で用いたマネジメント行動のリストを3種類にまとめると、ポストオフ者の受けているマネジメントには3タイプあることが見いだされた。マネジメントのポイントは、「尊重と高い期待」を本人に伝えること、「率直なフィードバック」をし、活躍のための試行錯誤に「伴走」すること、「放置」しないことの3つであることがうかがえる。上司のマネジメントスタイルと、「適応感」およびキャリアの見通しが立たないといった「キャリア停滞感」との関係を見ると、「適応感」は、「放任型」と「伴走型」の上司のもとでいずれも高く、「放置型」上司で低かった。「キャリア停滞感」は、「伴走型」の上司のもとで低い結果となった。