リファラル採用は何を目的に行うべきか
――まずは採用戦略上における、リファラル採用の正しい位置付けを教えてください。何のために、どのように活用するとよいのでしょうか。
伊達洋駆氏(以下、伊達):社会的な背景として、労働力人口が減少していく中で、自社にとって優秀な人材を確保することがどんどん難しくなっている現状があります。今後さらに人材獲得競争が激化していくときに、リファラル採用はかなり有望な方法だと考えています。
通常の採用手法では、すでに労働市場に出てきた、つまり自ら転職の意思を表明している人たちに対してアプローチするのが基本ですが、リファラル採用では必ずしもそうとは限りません。まだ動き始めていない潜在的な転職者にアプローチできるんですね。海外では主要な方法の一つになっていますが、日本ではまだ伸びしろがあると見ています。
鈴木貴史氏(以下、鈴木):そうですね。潜在的なタレントに対してアプローチできる唯一の採用手法がリファラル採用だと思っています。加えて、リファラル採用で採った人はオンボーディング要らずで、定着率も高くなることが分かっています。採用過程に入る前にスクリーニングがしっかり効いているので、自社にマッチすることが自明ですし、入社後も紹介者が気にかけてくれるので、自然と会社に馴染んでいきやすいんですね。
とはいえ、リファラル採用だけで採用活動のすべてを賄っている会社はありません。採用戦略上の位置付けとしては、サブチャネルというのが正しい。社員のつながりだけでアプローチするには範囲の限界がありますし、よくいわれるように、自分より優秀な人を口説くことは難しいからです。人材紹介やスカウトなど他の採用手法とのハイブリッドでリファラル採用を活用すべきだと考えています。
――現実的には、どの程度までリファラル採用の比率を上げるべきでしょうか。目安を教えてください。
鈴木:特段のエビデンスがあるわけではありませんが、GAFAでは50%くらいのリファラル採用比率を維持していると聞きます。メルカリもフェーズによっては70%、今は40〜50%だそうです。
伊達:基本的に従来の採用手法は、候補者と企業の目的がズレるのが当たり前じゃないですか。企業は良い候補者を採りたい。候補者は良い企業に入りたい。互いの目的が合致しない活動なので、敵対関係とまでは行かずとも、“攻略しあう関係”になるものです。書店に「適性検査攻略」とか「面接攻略」といった本が並んでいるように、“攻略すべき相手”だと捉えている。
ところがリファラル採用では、そのような対立関係は生まれにくい。紹介する相手がもともと友人や知人なので、「相手にとって良い企業を推薦したい」という想いが根底にあるからです。したがって、リファラル採用はサブチャネルとして他の手法と並べられるものではあるものの、質的な違いを理解して正しく使い分ける必要があると考えています。
鈴木:まさにおっしゃるとおりですね。僕らは「本質的なマッチング」と呼んでいますが、リファラル採用は正直者が損をしないのです。例えば、求人広告を出す企業としては、多くの応募を集めるために、自社をよく見せようとしますよね。これも攻略方法の一つ。同じくスカウトに登録している候補者も、小さなグループ内でMVPを取っただけでもMVP受賞をうたって企業の目に留まろうするじゃないですか。リファラル採用だと、それがない。ミスマッチが起きたら紹介者も気まずいので、下手に大きく見せるようなことはしません。まさに攻略しあう関係ではなく、互いにさらけ出しあって、本質的に合っていると分かればマッチングにつながります。