リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、企業の人事責任者に対し「個人選択型HRM(人的資源管理:Human Resource Management)に関する実態調査」を実施した。
調査の概要は次図のとおり。
個人選択型施策の導入実態について
「自己申告制度」「上司とのキャリア相談」の導入が進むも、活用不十分
社内キャリアの選択機会を増やす取り組みについて、「上司とのキャリア相談(1on1ミーティングでの会話などを含む)」(導入率71.3%/導入企業中十分活用されていない割合39.3%)、および「自己申告制度」(同67.6%/31.0%)は、導入率が高いものの、活用が不十分とする割合も高かった。
導入検討率が高かったのは、「ジョブ型人材マネジメント」(導入検討率:30.7%)、「複線型人事制度」(同29.4%)、「メンターやカウンセラーとのキャリア相談」(同29.1%)、「転勤の見直し」(同26.0%)、「高度専門人材の個別処遇」(同25.7%)、「副業・兼業の許可」(同24.7%)であった。個人による仕事やキャリアの主体的選択を重視し、社内キャリアの幅を広げる「個人選択型」の施策導入を多くの企業が検討しており、今後のトレンドになりそうだと同社は予測している。
チャレンジを評価する人事評価や他部署・経営情報の開示が個人選択型施策導入・活用の鍵
「学習指向の評価(失敗よりもチャレンジしたことを評価し結果を育成的なフィードバックに活かすような人事評価)」、「他部署・経営情報の開示(他部署の戦略や意思決定に関わる情報の開示)」の度合いが高いほど、個人選択型施策の導入数が多いことが分かった。
社内キャリアの良質な選択のためには、自己の能力や適性についての情報、社内にどのような組織や仕事があるのかについての情報が豊富に提供されることが重要だとしている。
社内公募制度の運用と目的・効果実感・課題認識について
社内公募制度導入の目的と効果実感の両方が高いのは、「若手社員のモチベーション向上」(目的72.8%/効果実感55.2%)、「若手社員の自律的・主体的なキャリア形成支援」(同64.8%/40.8%)、「中堅社員のモチベーション向上」(同60.0%/39.2%)、「中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成支援」(同56.8%/34.4%)、「新規事業・新規プロジェクトを担う人材の発掘」(同55.2%/34.4%)であった。
キャリア初期の適職探索や、新規立ち上げを担う人材の発掘などが、社内公募制度の導入に適したニーズだと考えられる。
副業・兼業許可の運用と目的・効果実感・課題認識について
副業・兼業許可の非導入企業が導入しない理由と、導入企業の運用上の課題認識を、同様の質問項目で比較。その結果、「副業・兼業をしている従業員が、本業を疎かにする/している」(非導入企業52.3%/導入企業10.8%〈41.5%ポイント差〉)、「従業員の副業・兼業のせいで、社内業務に支障が生じる/生じている」(同46.2%/6.8%〈39.4%ポイント差〉)、「従業員の労務管理の負担が大きい」(同41.5%/12.2%〈29.4%ポイント差〉)などに、統計的に有意な差がみられた。
副業・兼業許可に対する非導入企業の懸念は、実際には生じない可能性もあるという。
異動・配置ポリシーと組織の能力について
異動・配置に関するポリシーには、「個人選択型」のほかにも、「選抜型」「底上げ型」「欠員補充型」などが考えられるとし、それらの組み合わせには4タイプが見出された。
また、重回帰分析の結果、従業員が主体的に部門の枠を超えた取り組みをするなどの「現場力」は、「選抜・底上げ・個人選択併用タイプ」の企業群で高い傾向がみられた。「正社員の離職率の低さ」「部長クラスの女性管理職比率の高さ」「部長クラスへの最年少昇進年齢の低さ」に対しては、「個人選択中心タイプ」の影響がみられた。
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