SNSも従業員もオウンドメディア
──まずは、御社における「オウンドメディアリクルーティング」の定義からお聞かせください。
正確な定義でいうと、「自社の運営するメディアを軸に、高付加価値人材に自社主体で直接メッセージを配信し、共感を喚起することで人材獲得につなげていく能動的リクルーティングのこと」です。お金を払うペイドメディア、活動に対する評価であるアーンドメディアに対して、“オウンドメディア”については、自分たちでコントロールできるメディアとして幅広く捉えており、その意味では、SNSも自社アカウントならオウンドメディアですし、リファラルリクルーティングのように自社の魅力を伝えていく従業員も一つのオウンドメディアといえると思います。
いずれについても重要なのは、自社および職務についての魅力をきちんと整理してコンテンツ化し、社外に発信することです。それによって社内でも理解が深まり、それによって従業員もオウンドメディアとして機能するようになるでしょう。
──オウンドメディアリクルーティングは「採用マーケティング」に似ていませんか。
オウンドメディアリクルーティングは採用マーケティングの一手段です。ただし、オウンドメディアリクルーティングを実施するには、自社の魅力を知り、採用したいターゲットのペルソナを考え、どう伝えるべきかというように、採用マーケティングの考え方を使います。両者はそのような関係にあります。そのため、採用人数やコストパーハイヤー(採用単価)といったKGI(最終目標の達成指標)に至るまでのKPI(途中の達成目標)を分析することも必要ですし、その中でペイドメディア、アーンドメディアとの使い分けや効果の比較などもなされていくでしょう。
──こうした活動は、従業員のエンゲージメント向上にもつながってくると聞きます。
採用プロセスにおけるLTV[1]を、会社のことを知らないところから、存在を知り、理解を深め、働く場所として検討し、選んで、働き始め、いつか会社を辞めるまでとすると、「採用して終わり」ではなく、従業員にはその後も自社の理解を深め、継続して共感を得てもらうことが必要です。自社を知ってもらうことで、入社はもちろん、その後もカルチャーフィットして長く働いてもらえるわけですから。その意味で、オウンドメディアリクルーティングは従業員のエンゲージメントという視点も重要と考えています。
注
[1]: 一般には顧客生涯価値(Lifetime Value)の意味だが、ここでは顧客=採用候補者・従業員のこと。