エモーションテックは、人的資本経営の重要指標とされている従業員エンゲージメントスコアの一つであるeNPSに関する調査を実施し、その結果を発表した。
eNPSとは、「Employee Net Promoter Score」の略で、従業員エンゲージメントを数値化した指標。「現在の職場で働くことを親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」という質問に0~10の推奨度から回答してもらい、9・10を選択した推奨者の割合から0~6を選択した批判者の割合を引いて算出する。
今回は、通常の従業員エンゲージメント(eNPS)調査に加え、顧客の利益を最優先する姿勢である「顧客志向」が従業員エンゲージメントの向上に関連しているという仮説のもと、企業や個人の「顧客志向性」と「従業員エンゲージメント」の関係性に焦点を当てた調査を行った。
調査の概要は以下のとおり。
- 調査対象:主要15業界の企業に所属する6187名
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2022年7月13日~8月9日
- 有効回答数:6187件
調査の結果については、同社は以下のように述べている。
企業が顧客志向であるほど、従業員エンゲージメントが高い
「自分の会社が顧客志向だと思うか」という問いに対して、「非常にそう思う」と回答した人のeNPSが-45と最も高く、「全くそう思わない」と回答した人のeNPSが-93と最も低い結果となった。この結果から、顧客志向の度合いと従業員エンゲージメントには高い相関関係がみられる、すなわち企業が顧客志向であるほど従業員エンゲージメントが高まることが推測できる。
また、会社の顧客志向性に個人の顧客志向性をかけ合わせて分析したところ、個人の顧客志向性を重要視する人(「あなたが働く上で『会社が顧客志向であること』はどの程度重要ですか?」に対して「非常に重要だと思う」「やや重要だと思う」を選択した人)の従業員エンゲージメントは、以下のような違いがあった。
自分の会社が顧客志向であると理解している場合の従業員エンゲージメント(職場推奨度)は5.3ポイント(11段階中)だったのに対し、会社が顧客志向だと思えない場合の従業員エンゲージメント(職場推奨度)は2.7ポイントだった。
つまり、個人の顧客志向性を重要視している人は、自分の会社の顧客志向性を感じられないことによって、従業員エンゲージメント(職場推奨度)が大きく低下することが分かった。以上のことから、会社が顧客志向を実践できているかどうかが従業員エンゲージメントの向上に影響を与えていると考えられる。
特にサービス業界の従業員は「会社の顧客志向性」を重要視する
業界別では、特に「職業紹介・派遣」「宿泊」「金融」「教育」「飲食」が顧客志向への関心度合いが高い業界であることが明らかになった。これらの業界では、従業員が顧客と直接接点を持ちサービス提供を行う仕事が多く、顧客志向の重要性を認識しやすいことが考えられる。
自社を「顧客志向だと感じている」一般社員は、役員クラスのわずか半数
会社の顧客志向度合いの認識には、立場によって大きく差があることが判明した。「あなたの会社はどの程度、顧客志向だと思いますか?」という質問に対し「非常にそう思う」を選択した割合は、役員・部長クラスでは22.2%、課長・係長・主任クラスは12.2%、一般社員は11.0%と、役職が一般社員に近づくにつれ、会社の顧客志向性に対しての認識度が下がっていた。これは、経営者や経営陣が持つ顧客志向の姿勢が会社全体にまで浸透していない可能性を示唆している。
なお、同調査の詳細データは、同社のWebサイトで確認できる。
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