帝国データバンクは、人手不足を感じている企業の割合について調査・分析を行った。
人手不足割合は正社員で52.1%、非正社員で30.9%
2023年10月時点における、全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業は52.1%だった。前年同月比で1.0ポイント上昇しており、10月としてはこれまで最も高かった2018年(52.5%)に次ぐ高水準となる。また、非正社員では30.9%となり、10月としては前年に続いて3割を上回った。
正社員の人手不足割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」が75.6%で最も高かった。「円安の影響で訪日客数が回復している」(東京都)や「新型コロナが5類になり、人の動きが活発でリベンジ消費がみられる」(島根県)、「秋の紅葉シーズンに入り、集客が多い」(岩手県)などの声があり、インバウンドなど観光需要が活況なことで人手不足も顕著に表れたようだ。
2番目に高かったのは、ITエンジニアの不足が目立つ「情報サービス」(72.9%)だった。企業からは「人員確保が難しい状況が何年も継続している」(ソフト受託開発、京都府)のような、慢性的に人手不足が続いているといった声が寄せられた。その他、「建設」(69.5%)や「メンテナンス・警備・検査」(68.4%)など、8業種が6割台となった。
2024年問題が迫る建設業と物流業ではすでに約7割が人手不足
働き方改革関連法案によって、建設業と物流業にも時間外労働の上限規制が適用されることで労働力不足の深刻化が懸念されている。いわゆる「2024年問題」である。それぞれの業種について人手不足の現状を見ると、正社員において建設業では69.5%、物流業(道路貨物運送業)では68.4%の企業が人手不足を感じていた。2024年問題を目前に、これからいっそうの人手不足が予想される中で、すでに7割の企業が人手不足に陥っている結果となった。建設業では資材価格、物流業ではエネルギー価格の上昇などによって収益が圧迫されており、人件費に充てる分を捻出できないことが、人手不足の加速に拍車をかけているようだ。
人手不足を感じている企業の中で、前年同月と比較して従業員数(正社員)が「増加した」と回答した割合は、建設業では21.0%、物流業では20.9%にとどまった。従業員数が「変わらない」および「減少した」割合は両業種とも約8割となり、働き手が限られる中で今後も従業員数を増加させることは容易ではなく、両業種の人手不足は長期化することが予想される。
飲食店で非正社員の人手不足が顕著
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が82.0%で唯一8割を上回った。次いで、正社員では業種別でトップだった「旅館・ホテル」は73.5%と、非正社員でも2番目の高水準だった。また、「人材派遣・紹介」(64.2%)では人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が表面化している。ほか、小売り・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んだ。
なお、同調査の概要は次のとおり。
- 調査期間:10月18日~31日[1]
- 調査対象:全国2万7052社
- 有効回答企業数:1万1506社(回答率42.5%)
注
[1]: 雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2023年10月の結果をもとに取りまとめた。
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