今回お話を聞いた人事はこちら
新井 将司(あらい まさし)氏
汐留社会保険労務士法人 事業統括役員 社会保険労務士
大学卒業後、2009年に印刷会社へ新卒入社。社会保険労務士の資格を取得後、2011年に汐留社会保険労務士事務所(現法人)に企業コンサルタントとして転職。労働社会保険法に基づく各種手続きから人事制度の設計・提案等幅広い仕事を担当。2014年に同法人役員に就任。IPO準備、M&A、組織再編支援などを得意とし200社以上のコンサルティングを経験する傍ら、事業統括役員として現法人の事業戦略を担っている。
油谷 雅之(ゆたに まさゆき)氏
スミセイ情報システム株式会社 人材開発本部 人材開発部長
新卒入社後、企業保険システム部にて住友生命の企業保険システムの開発・保守を担当。アプリケーションエンジニア、プロジェクトマネージャーとして経験を積み、2021年より人材開発部に異動。現在はマネージャーとして、社内の採用・研修の企画・運営に取り組む。
杣野 祐子(そまの ゆうこ)氏
株式会社カオナビ コーポレート本部 本部長
ITベンチャーやアパレル企業にて契約業務、知的財産権業務、コーポレートガバナンス業務等、企業法務全般に従事。2018年株式会社カオナビに入社し、上場に向けた内部統制の構築を担当する。2019年よりコーポレート部門責任者を務める。
Q1 貴社の人的資本の開示項目を教えてください。
新井氏 弊社では、大きく3つの項目を開示しました。1つ目は、組織状況です。組織状態の中でも、仕事の不満足に関わる「衛生要因」と、仕事の満足に関わる「動機付け要因」を可視化しました。
衛生要因では、女性管理職比率や休暇取得率(有給休暇、育児休業)、平均残業時間などを、動機付け要因では、教育投資や研修時間、健康診断受診率などを可視化しました。その結果、女性管理職の割合が減少しているといった課題が明らかになったため、女性管理職を増やす施策を積極的に行おうと考えています。
2つ目はスキルです。弊社ではスキルを、「知識」「技術」「応用力」「特性」(KSAO)と定義しています。この4つのスキルを、最低限持つべき能力を示す基礎能力とプラスアビリティの2つに分けてポイント化し、可視化しました。さらに、勤続年数別の基礎能力の分布や、基礎能力とプラスアビリティの相関関係も明らかにしました。
そして3つ目は、企業理念の浸透度です。いままさに可視化をチャレンジしている項目で、弊社が大切にしている、「知識の共有・還元」「新しいチャレンジ」「社内貢献」の3つの観点の数値化を進めています。
たとえば、知識の共有度合いを知るために「案件のサポート社数」を、新しいチャレンジを把握するために「基礎能力値と新規営業件数の相関」を可視化しました。また、社内貢献度を測るために、弊社独自の役割分担制度における役割の分担数と、職位・資格をポイント化した数値を比較しました。
油谷氏 弊社ではまず、女性活躍推進法に基づく指標として「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金差異」を可視化しました。
そのうえで、健康経営に関する指標として「健康診断受診率」「ストレスチェック受検者率」「メンタル疾患者休業者占率」「ワークエンゲージメント偏差値」なども開示しています。
杣野氏 弊社では、バリューをもとにこれまでの人事施策を整理し、人事データを分析した結果、弊社のパーパス実現や経営目標達成のためには、求める人材「ユニーク・パフォーマー」の育成・獲得と、生産性の向上が重要であるという結論になりました。
そこで、最重要指標に「ユニーク・パフォーマー」の育成進捗を測るためのサーベイ結果と生産性の指標である人的資本ROI(営業利益額÷人的資本投資額)を設定し、開示しています。
さらに、多様性、成長支援、働き方、その結果としての登用・報酬を人材戦略の柱とし、それぞれの指標として、女性管理職比率、研修実施回数、リモートワーク比率、最年少管理職年齢などの項目を選定し、開示しました。
人的資本開示自体の独自性も大切にしており、カオナビの人的資本経営に関する情報をまとめたWebサイト「kaonavi universe」を公開しています。