2023年度より全上場企業に対して人的資本の情報開示が義務付けされたが、現状では開示に積極的な企業とそうでない企業との間で「二極化」が進んでいる——Unipos株式会社 代表の田中弦氏は1月17日に開催したウェビナー「日本の統合報告書全部読んで分かった 人的資本経営 永久保存版スペシャル」においてそう指摘した。同会では田中氏が約5000社の情報を読み込んだうえで、人的資本経営におけるベストプラクティスとして9つのモデルを発表。後進企業などに取り組みのヒントを提示した。本稿はそのレポートの後編として、前編に引き続きモデル5~9の事例と田中氏独自の見解をお届けする。

田中 弦(たなか ゆづる)氏
Unipos株式会社 代表取締役社長CEO
1999年ソフトバンク株式会社 インターネット部門一期生としてネット産業黎明期を経験。経営コンサルティングファーム・コーポレイトディレクション(CDI)にて事業立ち上げ支援や戦略策定に関わる。その後ネットエイジグループ(現ユナイテッド社)執行役員。2005年Fringe81株式会社を創業。独立後2017年東証マザーズ上場。同年Uniposのサービス開始。2021年10月にUnipos株式会社に社名変更し、個人の人的資本を発見し組織的人的資本に変えるUniposの提供を中心に活動。「人的資本経営専門家」として経営戦略と人事戦略を紐づけるための「人的資本経営フレームワーク(田中弦モデル)」の公開人的資本開示を読んで導き出した独自の見解を発信。メディアへの出演多数。『心理的安全性を高める リーダーの声かけベスト100』(ダイヤモンド社)著者。
本記事の各情報は2024年1月17日開催時点のものです。
モデル1~4を紹介している前編もぜひお読みください!
【モデル5】健康経営との組み合わせ
田中氏は、有価証券報告書や統合報告書、海外指数企業など、のべ5000社の人的資本開示をすべて読了した後、各企業を5段階評価で格付けし(詳しくは前編を参照)、人的資本経営のベストプラクティスを9つのモデルに分類した。モデル1からモデル4まで紹介した前編に続き、後編である本稿ではモデル5「健康経営との組み合わせ」から紹介していく。
[画像クリックで拡大表示]
人的資本経営において、健康経営との組み合わせは、働く人々の能力が最大限に発揮されるよう、集団(環境・土台)に対する投資を行うことを意味する。この事例として田中氏がまず挙げたのが三井化学だ。
「三井化学では、メンタルヘルスの風土(縦軸)と職場のストレス度(横軸)を分析し、職場改善に役立つよう組織の結果を各所属長に説明しています。具体的には、『あなたの部署は、健康総合リスクが高く、風土が悪いので改善が必要です』と部長や事業部長に伝えているということですね。ここで重要なのは、この分析が個人情報と紐づけられているわけではなく、部署が会社全体の平均と比較されていることです。そして、風土が良くストレスが低い職場環境、すなわち図の左上を目指すことは一目瞭然ですね。健康経営と人的資本経営データを統合した分析はとても斬新だと感じました」(田中氏)
[画像クリックで拡大表示]
次に紹介したのは太陽ホールディングス。同社では、全従業員を対象としたストレスチェックを実施し、36項目中で31項目が全国平均を上回る結果となった。
「こちらはストレスチェックを活用したとても良い事例ですね。もう少し言うと、残りの5項目を課題として開示されるとさらに良いと思います。太陽ホールディングスでは、1人当たりの図書購入費用が24万円、1人当たりの研修費用が41万円となっており、さらに食堂の運営にも力を入れています。人的資本への投資や環境作りにおいて、かなり突出したレベルだと感じました」(田中氏)
[画像クリックで拡大表示]
会員登録無料すると、続きをお読みいただけます
-
- Page 1
-
- Page 2
-
- Page 5
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
山田 優子(ヤマダ ユウコ)
神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

