必ずチェック! ポイント
- 社会情勢の急速な変化や、労働者の職業人生の長期化を背景に、労働者の学び・学び直し(リスキリング・リカレント教育)の必要性が高まっている
- 労働者の学び・学び直しの必要性とともに、企業の人的資本経営への関心の高まりも受け、公的なガイドラインとして初めて人的資本経営の具体的内容や実践論に言及している
- 同ガイドラインは「1. 基本的な考え方」「2. 労使が取り組むべき事項」「3. 公的な支援策」の3部構成で、公的な支援策の内容・利用方法や学び・学び直しに取り組む企業事例については主にガイドライン別冊で紹介している
関連サイト・資料
- 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」
- 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン 別冊(令和5年3月改訂版)」
- 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン(令和4年6月策定)について 概要」
- 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン 特設サイト」
3分でチェック! 職場における学び・学び直し促進ガイドライン
「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」とは、職場における人材開発(人への投資)の抜本的強化を図るため、企業と労働者が取り組むべき事項を体系的に示したものです。変化が激しい現代においては、労働者1人ひとりが新たな付加価値を生み出す「主体」となることで、企業と労働者の持続的成長が実現できると考えられています。
企業が新たな成長に向けて人材戦略および人材開発の重要性を認識し、かつ労働者がやりがいや働きがいを持って能力を発揮できるよう、労働者の「自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直し」を国が支援しています。
学び・学び直しは一過性のブームではなく、今後の日本経済の発展に不可欠なテーマです。同ガイドラインでは、なぜ学び・学び直しが必要なのか、どのように学びを進めていくかを具現化しつつ、国ができる支援策をまとめています。
また、ガイドラインの前半では、労使が取り組むべき事項を6カテゴリ13項目に細分化し、取り組むべき背景や注意点を詳しく解説しているため、学び・学び直しを検討する人は必読です。
本記事の後半では、「1. 基本的な考え方」「2. 労使が取り組むべき事項」「3. 公的な支援策」の要旨を抜粋してまとめたので、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を読み進める際の参考にしてください。
ガイドラインの策定日・更新日
令和4年6月 | 厚生労働省により、労使双方の代表を含む公労使が参画する労働政策審議会(人材開発分科会)における検討・審議を経て「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定 |
令和5年4月更新 | 令和5年度予算案が国会で成立した後、労働政策審議会人材開発分科会における報告を経て、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン 別冊」に掲載の公的支援策を更新 |
令和5年8月更新 | ガイドラインの更なる周知を図り、職場における学び・学び直しを促進するため、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン 特設サイト」を開設 |
対象者
企業、労働者すべてが対象となります。雇用形態等にかかわらず、あらゆる労働者を対象としています。
ガイドラインの構成
「1. 基本的な考え方」「2. 労使が取り組むべき事項」「3. 公的な支援策」の3部構成となっています。また、職場における学び・学び直しを促進するためのガイドライン特設サイトが公開されています。特設サイトではシンポジウムの情報や、企業事例も掲載されています。
1. 基本的な考え方
同ガイドラインの冒頭では学び・学び直しの重要性を伝え、企業と労働者の目線合わせをするために、学び・学び直しの基本的な考え方を紹介しています。要点は次のとおりです。
学び・学び直しの背景
DXの加速や職業人生の長期化など経済・社会環境の変化に伴い、学び・学び直しの必要性が高まっています。労働者は新たな付加価値を生み出す「主体」として、自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しに取り組むことを、また、企業は持続的成長に向けて学び・学び直しを協力かつ継続的に支援することを求められています。
労使協働の必要性
労使双方が共通認識に立ち、学び・学び直しに「協働」して取り組むことが重要です。
- 各労働者が自律的・主体的に取り組めるよう、経営者が学び・学び直しの基本認識を労働者に共有する
- 管理職・現場のリーダーなどが、各労働者と学び・学び直しの方向性や目標の「擦り合わせ」を行ってキャリア形成をサポートする。あわせて企業は現場のリーダーを支援・配慮する
- 学び直しを継続するために、キャリアコンサルタントによる労働者への助言・精神的なサポートや、現場のリーダー支援を行う
- 「労働者相互」の学び合いを意識する
学びのプロセスを意識する
雇用形態等にかかわらず、基本認識の共有や教育機会の提供を行うことが重要です。職務に必要な能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせ、学びの機会の提供、促進支援、学びの実践・評価という、「学びのプロセス」を意識することが望ましいとされています。
学びの好循環を生み出す
学び・学び直しの実践により、学びが学びを呼ぶ「学びの好循環」を生み出すことを期待します。学びの好循環とは、学びの気運や企業文化・企業風土の醸成・形成されることで、変化に対してより高いレベルの新たな学び・学び直しが自走的に進む状態を指します。中小企業においては、経営者のリーダーシップと継続的な発信力が学びの気運や企業文化・企業風土を醸成するための鍵になります。
2. 労使が取り組むべき事項
同ガイドラインでは、労使が取り組むべき事項を6カテゴリ・13項目に分けて紹介しています。全体像をつかむために、次表を活用してください。
1 | 学び・学び直しに関する基本認識の共有 |
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2 | 能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の共有 |
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3 | 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しの機会の確保 |
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4 | 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促進するための支援 |
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5 | 持続的なキャリア形成につながる学びの実践、評価 |
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6 | 現場のリーダーの役割、企業によるリーダーへの支援 |
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3. 公的な支援策
ガイドライン2部「労使が取り組むべき事項」にひも付けて、省庁横断的に公的な支援策が公開されています。令和5年4月に更新されたガイドライン別冊には、36項目の公的な支援策が記載されているため、学び・学び直しに取り組む企業と労働者は、一度は確認することをお勧めします。
なお、公的な支援策は今後も更新される見込みです。
公的な支援策の例
「職場における学び・学び直し促進ガイドライン 別冊」より、公的な支援策を抜粋して紹介します。
2役割の明確化と合わせた職務に必要な能力・スキル等の明確化
3学ぶ意欲の向上に向けた節目ごとのキャリアの棚卸し