三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、2023年11月にサクセッションプラン(以下、サクセッション)に関するサーベイを実施し、その結果を発表した。同サーベイは、経営人材のサクセッションに関して、日本企業の取り組み状況を把握することを目的に、2022年度に続いて実施したという。
社長候補者の選出や育成の判断基準となる「人材要件」を設定する企業は約40%
サクセッションの全般的な課題としては「人材要件が曖昧であること」が最多(約71%)であり、社長の人材要件の設定率は42.1%、経営陣幹部では28.9%となった。候補者の選出・育成を進める上では、その判断基準となる人材要件の設定は不可欠であり、人材要件が具体化されることで、候補者選出などの取り組みが進展することが考えられる。
社外人材を候補とする企業は、社長で25.0%、経営陣幹部では約60%
社外人材を社長の候補者に含めることについては、25.0%の企業が「含めている」または「近い将来に含める予定(含むその検討中)」と回答。経営陣幹部ポジションの場合、同様の回答は56.6%となり、社長候補者には内部昇進を重視する一方で、経営陣幹部候補者には社外人材の登用ニーズがあることが推察される。
過半数の企業で、社長および経営陣幹部候補者への育成施策として、「社外研修」と「タフアサインメント」を実施
後継者候補への育成施策を行っている企業のうち過半数が、具体的な施策内容として「社外研修」と「タフアサインメント」を、社長および経営陣幹部候補へ実施している結果となった。一方で、「個別育成計画の策定」については、社長は過半数(56.0%)であるのに対し、経営陣幹部は38.7%であった。経営陣幹部のサクセッションを計画的かつ実効性高く進めるためには、具体的な育成計画を充実させる必要がある。
サクセッションに指名委員会が全く関与していない、または報告を受けるのみである企業は20.0%
サクセッションの取り組みにおいて客観性や実効性を高めるためには、指名委員会や社外役員の適切な関与が求められる。今回の回答企業のうち20.0%で、サクセッションについて指名委員会や社外役員が「全く関与していない」または「実施結果の報告を受けているのみ」であることが分かった。今後、指名委員会による各基準やプロセスの妥当性の検証などを強化することで、実効的な監督機能を確保することが必要だと考えられる。
女性役員の拡充に向けては、「環境整備」への取り組みが目立つ
女性役員の選出・育成上の課題としては、「女性管理職の絶対数の少なさ」が約95%、「役員就任へのモチベーション上の課題」が約41%だった。女性活躍に資する部長クラス(女性)への取り組みとしては、「働く場所や勤務時間の柔軟性等の環境整備」(63.2%)、「女性向けキャリアセミナー」(27.6%)の順に多く、役員候補に女性を一定数(割合)含めることやタフアサインメントの優先的な付与は、いずれも10%前後となった。女性役員の拡充に向けては、「環境整備」や「意識付け」に関する取り組みが優先されていることがうかがえる。
なお、同調査の概要は次のとおり。
- 調査対象:東証プライム上場企業およびプライム以外で売上高500億円以上の企業4194社
- 実施時期:2023年11月
- 調査手法:調査票郵送方式
- 有効回収数:121社(回収率2.89%)うちプライム上場企業は76社
【関連記事】
・人材育成の課題は「次世代リーダー層の人材不足」、「コア人材の流出」など順位上げる―日本経営協会調べ
・プレ管理職への育成支援は実施率39% 新任・既任管理職と比べて低い割合に—JMAM調べ
・大企業の管理職研修「対面」が6割以上も「日程調整が難しい」など課題も—イー・コミュニケーションズ調べ