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インタビュー《企業文化・カルチャー》| グローバル企業のコアバリュー浸透の取り組み

Zoomの最高人事責任者に聞く、グローバル約8000人の社員にコアバリューを体現してもらうための取り組み

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 米国サンノゼに本拠地を構える、Zoom Video Communications,Inc(以下、Zoom)。同社は2011年の創業時より「ケア」というコアバリューを掲げ、コロナ禍を経て約8000名の従業員を擁するグローバル企業へと大きく成長している。本稿では、ZoomのCPO(最高人事責任者)であるマシュー・サクソン氏にインタビューを実施。同氏が行ったグローバル規模でコアバリューが浸透するための取り組みや、その大切さを聞いた。

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Zoomがコアバリューの再定義に挑んだ理由とは

——まず、貴社のコアバリューについて教えてください。

 私たちはコアバリューとして「ケア(配慮)」を掲げています。その対象は、「顧客」「会社」「コミュニティ」「チームメイト」「自分自身」の5つです。これらをしっかりとケアすることで、他社との差別化につながり、Zoomのビジネスを健全に保ち、成長へ導けると考えています。

Matthew Saxon氏

Matthew Saxon(マシュー・サクソン)氏

Zoom Video Communications,Inc チーフ・ピープル・オフィサー(CPO:最高人事責任者)

2022年6月にZoomに入社。テキサス州オースティンを拠点にZoomのPeople Experienceチームを統括し、カルチャー、組織設計、人材獲得、エンゲージメント、トレーニングと人材開発、従業員体験、インフラストラクチャーなどにおいて、会社のコアバリューである「Care(配慮)」を浸透させている。

——マシューさんが入社された2022年6月当時、Zoomにおいてコアバリューはどのような存在だったのでしょうか。

 ケアというコアバリューは、エリック・ユアンがZoomを創業した2011年から変わっておらず、私たちにとって非常に大切な価値観でした。しかし当時、このコアバリューを再定義しようという機運は高まっていました。

 コアバリューを策定してから10年以上が経っていましたし、もともとは2000人ほどだった従業員が、コロナ禍を通じて一気に8000人近くにまで増えていたからです。新しく入ったメンバーからは、「ケアの概念は理解しているけれど、Zoomのメンバーとして働く中で、どう体現すればよいのか分からない」という声が上がっていました。

 会社の文化というのは、庭のようなものだと思います。庭は放っておいてもさまざまな草花が育ちますが、自分が育てたい植物を育てるには、しっかりと手入れをする必要があります。会社の文化もそれと同じで、理想的な文化にするためには、定常的に手をかけ続けなければなりません。

 そこで、コアバリューの再定義に取り組みはじめたのです。

約8000人の従業員に向けたコアバリュー浸透施策

——コアバリューの再定義とは、コアバリューそのものを見直すことではなく、コアバリューをあらためて浸透させるための取り組みということですね。

 そうです。まず私たちはアンケートを取り、現場の従業員やマネージャー、シニアリーダーたちの声に耳を傾けました。「ケアというコアバリューは、あなたにとってどういう意味を持っていますか?」と。

 また、人事部門に関しても、人事のあらゆるプロセスを体系的に見直し、どこでケアを体現できているのかを、すべて洗い出しました。たとえば、採用面接のときに、コアバリューに関する質問をしているのか。リーダーシップとして求める能力の中にケアに関する項目がちゃんと入っているのか。チームメイトの中でケアを体現できている人を、ちゃんと表彰する制度はあるのか、といった点です。

 こうして、従業員がコアバリューを再定義する過程に関われるようにしたことで、コアバリューがグローバルで浸透している状態に近づきました。

——働く国や言葉が異なる8000人もの従業員がいると、コアバリューを浸透させる難易度は非常に高かったのではないでしょうか。

 施策自体に特に激しい反発はなく、CPOとして大きな壁は感じませんでした。一方で、コアバリューは、言葉にするのは簡単ですが、それを体現するのははるかに難しいものです。

 従業員がコアバリューを行動として表そうとするとき、どうしてもトレードオフになって判断に迷うことがありますよね。たとえば、「お客様のケアを優先すると、会社のケアにならないときに、どう判断するのか」「予算を減らさなければならないけれど、そうするとチームメイトのケアにならないのではないか」といったケースです。

 このような難しい判断を迫られるときこそ、コアバリューを文化として根付かせるチャンスと受け止め、しっかりと意思決定のフレームワークを説明することが重要だと感じました。

 他には、日々の業務でコアバリューを思い出して、互いに行動を強化し合うために全社員に「WE CARE FOR ○○」と記した5色のピンバッジを配布したのも、ユニークな施策の1つです。

配られたピンバッジ
配られたピンバッジ

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)

1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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