ベンチャーで働く「メインディッシュ」がない⁈ サーベイで見えた組織の状態
——まずは貴社が抱えていた組織の課題を教えてください。
石井功一氏(以下、石井) まず当社は、2024年4月に発表した人的資本レポートにて、組織ビジョン「顧客とともに“未来”をつくる『イノベーション組織』」を打ち出しました。その実現に向けて、「①仲間を集める」「②成長に向き合う」「③組織をつくる」という3つの観点で取り組みを進めています。その際に、組織の状態を知る指標となるのが、毎月実施しているエンゲージメントサーベイのスコアです。
スコアの変化を見ていると、山崎があることに気がつきました。それは、他のスコアの伸び率と比べると、「成長機会」や「やりがい」の伸び率が少し低いことです。
——それはなぜなのでしょうか。
山崎愛佳氏(以下、山崎) 2021年から2022年にかけて、スパイダープラスの組織は急速に拡大しました。それを受けて、2023年は全社メッセージの強化に取り組んだのです。これにより、「ミッション・ビジョンへの共感」や「組織戦略への共感」といったスコアは伸びた一方、会社からのメッセージの中で自分にとって大切なものを選び取りづらくなってしまっていたのではないか。あるいは、会社のメッセージを伝えることに重きを置きすぎて、メッセージを受け取る社員の当事者感が薄れ、受け身になってしまったのではないかと思いました。
スパイダープラスは社会貢献性の高い事業をしていますし、入社される方もそこに共感していただけているので、カルチャーフィットはできている。それなのに、「成長機会」や「やりがい」のスコアが伸びない違和感が私の中に強くありました。加えて、新しく入社された方と面談をしていると、ミッションへの共感度が非常に高い一方で、ベンチャー企業として前のめりに成長し、挑戦しつづけるには、「ミッションの実現と自身の業務のつながり」が足りないように感じました。そこで、会社として、社員1人ひとりに自分自身のやりがいを見つめ直してもらうことが必要なのではないかと考えました。
石井 「なぜこのスコアが伸びづらいのだろう」と別の執行役員に相談したとき、「ベンチャーなのに『成長機会』や『やりがい』が感じられないなんて、みそ汁で白米を食べているようなものじゃないか」と言われたことが印象に残っています。やはりベンチャーのメインディッシュは「成長機会」や「やりがい」ですし、ここを伸ばすことは非常に大事です。
一方で当社の事業では、建設業界の働き方改革という大きなテーマに取り組んでいるので、自然に身を任せているだけだと、成果を実感できるまでに時間がかかる。そこで半ば強引にでも、自分の仕事の中でやりがいや成長を実感したエピソードを話してもらう機会をつくろうと、「ヤリイカ大賞」を企画しました。