オルビスの組織変革を支えた4つの施策
オルビスでは、従来の「セクショナリズム」と「シニシズム」が根付いた組織文化を改め、「オープンマインド」と「未来志向」へと転換するために、次の4つの施策を柱に進めた。
1. 行動指針「ORBIS MANAGER STYLE」の策定
まず、新たな組織文化を浸透させるための基盤として、社員に7つの行動指針「ORBIS MANAGER STYLE(オルビスマネジャースタイル)」を策定。「してほしい行動」と「してほしくない行動」をあえて明文化し、挑戦を促す文化への転換を図った。たとえば、「内部指向、前例志向」などは「してほしくない行動」、「外部指向、市場志向」などは「してほしい行動」だ。

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「私たちは、0→1で組織文化をつくるのではなく、既存の文化を塗り替えていく必要があり、何をやめるべきかも同時に示すことも重要でした。『してほしくない行動』をそのままにして新しい行動だけ促しても、古い文化が残り続けてしまうためです」と岡田氏は説明する。この二面性のある指針が、文化変革の鍵となった。
2. 360度フィードバック「STYLE QUEST」の導入
次に、行動指針の形骸化を防ぐために、オルビスでは影響力のある管理職から行動変容を促すことを重視。そこで、「STYLE QUEST(スタイルクエスト)」というメンバーから上長にフィードバックする制度を導入した。
この制度では、3ヵ月に1回、部下が上司の行動を評価し、行動指針が実践されているかどうかをフィードバックする。上司の「7つの行動指針のうち、特に強みとなっているもの」と「改善が必要なもの」を明確にし、その理由とともに伝える仕組みだ。
「私自身も、この仕組みを通じて、『してほしいことより、してほしくないことを強調するメッセージが多いため部下が萎縮してしまう』といったフィードバックを受けました。自分では気づいていなかった行動を見直し、自身の行動変容につながるきっかけになりました」(岡田氏)
谷本氏はフィードバックのコメントを読み、「ポジティブな内容を先に伝える設計にしていることで、受け手の納得感を高める設計であるのがすばらしい」と評価した。
3. 採用戦略の転換
新しい組織文化を定着させるため、オルビスは採用基準を見直し、「オープンマインド」で「未来志向」のある人材を最優先で採用する方針へと転換。最終面接では、行動指針を実践できるかどうかを重点的に確認し、「挑戦を受け入れ、推進できる人材かどうか」を評価する基準とした。
さらに、中途採用の強化に加えて、業務委託のスペシャリストを積極的に登用。これは外部プロフェッショナルといっしょに働くことで、「挑戦するとはどういうことか」を社内に示し、価値観を浸透させる狙いがあった。

4. 評価・報酬制度の改革
「挑戦する組織文化」を定着させるため、人事評価と報酬制度も改革。「行動指針の実践度」と「成果」の両面で評価する仕組みを導入し、基本給と賞与の比率を7:3に設定。基本給は行動指針の実践度(オルビススタイル評価)に基づいて決定し、賞与は成果に応じて最大で通常の3倍まで支給される仕組みとした。それにより、行動指針を実践すれば基本給は安定し、成果を出した人にはダイナミックに報いることが可能になった。
また、個人目標と経営目標の連動性を高めるため、MBO(目標管理制度)を強化し、評価制度を通じて組織の方向性を統一。「何をすれば評価されるのか」が明確になったことで、社員の挑戦意欲を引き出すことにつながった。