「やる気が高まりつづける好循環サイクル」を回すことは共通の課題
ここまで、新卒新人が1人ひとりいかに違うのかを見てきました。一方で、新卒新人である本人にとって、実現を目指したい状態は、ある意味全員同じといえます。本連載の第2回・第3回でも紹介した「やる気が高まりつづける好循環サイクル」が回っている状態です。この状態に向けて、本人と周囲が力を合わせていくことをお勧めします。

昨今、私たちは多くの企業から、新卒新人のオンボーディングの構造変革をしたいという相談をいただきます。相談をいただいた企業に詳しくヒアリングをすると、新卒新人に関する問題や課題感は各社少しずつ違うのですが、共通する問題も見えてきます。たとえば、入社後早期に離職する社員が増加している「早期離職」の問題と、より早い事業成長と育成コスト圧縮のためにいっそう強く求められる「早期戦力化」という問題です。
ところが、配属後のオンボーディングを現場に一任すると、新卒新人がうまく立ち上がっている職場とそうでない職場に濃淡が出てしまいます。職場によって、若手社員の戦力化スピードにバラつきが生じるわけです。
そこで多くの人事の皆さんは、現場のマネジメント層に新人たちの客観的な情報提供を行い、マネジメントを支援しています。また、新人・若手社員の全体傾向を明らかにして、採用活動とオンボーディングの仕組みの改善・見直しを図り、早期離職や早期戦力化の問題を解決しようと試みています。
もちろん、こうした取り組みを進めたほうがよいのは間違いありません。ただ、本人に対する視点が欠け、好循環サイクルを効果的に促進できないと、無理やズレが生じてしまい、せっかくの努力が無駄になりかねません。新卒新人のオンボーディングに関しては、どのような施策をするにせよ、1人ひとりの「やる気が高まりつづける好循環サイクル」を回すためにどうすればよいのか、という視点から考えることをお勧めします。そうすれば、自ずと成果がついてくるだろうと思います。
次図は、ある大手企業3社の入社2~4年目社員を対象にしたアンケート調査結果です。回答者は、3社のオンボーディングの対象になっている人材本人(入社2~4年目、入社年次は各社によって異なる)です。得点は、心理メカニズムの状態を測定したもの(5件法:「5.あてはまる」「4.どちらかといえばあてはまる」「3.どちらともいえない」「2.どちらかというとあてはまらない」「1.あてはまらない」)です。また、上司評価を高・中・低と3段階に分け、高群と低群間で統計的に有意差がある項目に印(**:1%水準、*:5%水準)を付けています。

このデータから分かるのは、「らしさを発揮」→「期待に応える」→「経験から学ぶ」→「次に生かす」という成長サイクルを感じている人、そして「成長実感」を得ている人は、周囲からの評価が高いということです。つまり、成長サイクル(=好循環サイクル)が回れば、新人若手はすくすくと伸びていくことが、この3社のデータが示しています。