組織サーベイの「設計・実施」におけるポイント
サーベイを「やった感」で終わらせず、組織改善につながる取り組みにするには、設計と実施のプロセスを丁寧に踏むことが欠かせません。単に「とりあえず質問を並べて配信する」だけでは、期待する結果は得られません。
実際に以下のようなケースに直面した経験のある方もいらっしゃるでしょう。
- 目的が曖昧なままサーベイを実施し、結局「で、この結果から何をすればいいの?」と立ち止まってしまう
- 設問を思いつきでつくった結果、分析しにくく、アクションにつながらない
- 回答収集の工夫をせず、回答率が低く、組織の実態が全く把握できない
こうした失敗は、サーベイそのものに対する従業員の信頼を損なってしまい、従業員の「サーベイ疲れ」(サーベイに対して意味を感じず、回答することがおっくうになる状態)のきっかけになるかもしれません。
そこで重要になるのが、組織サーベイの設計・実施における3つのポイントをきちんと押さえることです。
- 目的の明確化:「なぜこのサーベイを実施するのか」を定める
- 適切な設問設計:目的に沿った問いをどうつくるかを決める
- 実施・回答収集の工夫:従業員にどう届け、どう回答を集めるかを工夫する
一見当たり前のようですが、実際にはこの基本を外してしまう組織が少なくありません。特に最初の「目的の明確化」が曖昧なままでは、設問も回答収集もすべてがブレブレになってしまいます。
では、3つのポイントを順に見ていきましょう。
1目的の明確化
組織サーベイを設計するうえで最初に考えるべきは「今回のサーベイを何に使うのか」、つまり目的です。ここを曖昧にしたまま進めると、設問も分析もアクションもブレてしまい、結局「やった感」だけが残る結果となります。
目的は、大きく以下の3パターンに整理できます。
パターン①:組織のあるべき姿が明確にある場合
「自律的に挑戦する組織を目指す」「心理的に安心して発言できる職場にしたい」など、組織のあるべき姿を掲げている場合は、その状態が実現されているかを確認する設問を設計します。
この場合の目的は、そのビジョンがどの程度浸透し、従業員の行動や意識に現れているかを確かめることとなります。
パターン②:組織課題について仮説がある場合
「管理者層と現場の間に温度差があるかもしれない」「部署間の連携不足が成果阻害の要因ではないか」といった仮説がある場合は、それを検証できる設問を設定します。
この場合の目的は、立てた仮説の妥当性を検証し、課題の実態を明らかにすることとなります。
パターン③:実施した人事施策がある場合
以前行った組織サーベイで「新入社員の立ち上がりに課題がある」と出て改善施策を行った場合は、その効果を確認できる設問を設定します。
この場合の目的は、施策の成果を定量的に測定し、次の改善の方向性を見極めることとなります。
目的の明確化は「サーベイの舵取りそのもの」です。ここで方向性を見誤れば、どれだけ回答データが集まっていたとしても、進むべき道を見失ってしまいます。逆に目的が明確なら、ここから先の分析、アクションも自ずと筋が通り、サーベイ自体の価値が格段に高まります。
ここで重要なのは、サーベイを実施する前段階で組織の「あるべき姿」や「課題の仮説」「施策の狙い」といった見立てがあることです。これがなければ、「とりあえず実施したアンケート」の域を出ることができず、せっかくのサーベイの意味もありません。
これに加え、サーベイの良さは「想定外の発見」がある点です。あらかじめ立てた見立てや仮説以外にも、意外な課題や改善のヒントが見つかることがあります。目的を持って実施しながらも、新しい気づきに対してオープンであることも、組織サーベイを価値ある取り組みにするカギになります。