3. 要点解説
(1)安全配慮義務違反について
今回、裁判で述べられた国家賠償法1条1項の規定は次のとおりです。
<国家賠償法>
- 第1条国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
- 2前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
今回は県の職員による安全配慮義務違反ですので、国家賠償法が適用され、国が賠償責任を負うことになります。
また、公務員については適用除外ですが、労働契約法では、次のとおりに安全配慮義務が定められています。
<労働契約法>
(労働者の安全への配慮)
- 第5条使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
公務員、民間問わず、安全配慮義務については、適切に対応することが必要になります。
(2)過重労働と安全配慮義務
職員が過重労働となれば、心の健康を害し、今回のような自殺につながるリスクがあります。過重労働→メンタルヘルス不調→自殺念慮→自殺というのが通常の最悪のパターンです。
今回は、過重労働→メンタルヘルス不調→過重労働→自殺念慮→自殺という流れでした。
すなわち、メンタル不調で通院している状況であり、産業医から注意されていたにもかかわらず、過重労働させていたともなれば、安全配慮義務に違反しているといわざるをえません。
裁判でも、「Xは、平成27年3月から4月にかけての過重労働によりうつ病を発症した後、一時的に通院頻度が減少した期間があったものの、恒常的な長時間労働から解放されることはなく、うつ病の状態が改善されないまま、B1課でも長時間の業務に従事することとなり、更なる過重業務による心身の負担にさらされた結果、自殺するに至ったと認められる」としています。