HRガバナンス・リーダーズ(以下、HRGL)は、TOPIX100社を対象にした有価証券報告書における人的資本関連情報の開示実態を調査し、その結果を公表した。同調査は、2023年から有価証券報告書で開示が義務化された人的資本の項目について、現在の開示状況や過去3年間の変化を明らかにする目的で実施された。
調査によると、開示が義務付けられている「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金差異」のいわゆる「ダイバーシティ3指標」の実績値は、すべて年々増加傾向にある。特に男性の育児休業取得率は3年間で10ポイント以上上昇し、70%台後半まで増加した。一方、女性管理職比率と男女間賃金差異は微増にとどまっている。

女性管理職比率について、連結ベースで国内子会社を対象とした数値を開示する企業の割合は3割台に達し、年々増加している。ただし、海外子会社を含む数値を開示する企業は2割超で、こちらはほぼ横ばいとなった。

人的資本戦略に関する開示状況では、「ダイバーシティに関する取組み」が約9割の企業で示されており、最も多い。続いて「従業員エンゲージメントに関する取組み」や「全社向けの採用・育成等の取組み」が8割を超えている。特に「サクセッション・次世代リーダー向け育成」や「パーパス・ビジョン・経営戦略などの従業員への浸透」に関する取組みは、3年間で約1.8倍と増加傾向が顕著である。

さらに、人的資本に関する数値指標や目標の開示でも、「ダイバーシティの状況を表す指標(女性)」を開示する企業は7割超、「従業員エンゲージメント・スコア」を開示する企業は6割超に達した。「パーパス・ビジョン・経営戦略等の浸透」「ダイバーシティ関連」「人件費・人材投資額等」に関する指標の開示率も、過去3年間でそれぞれ約3倍、2倍、1.9倍に増加している。

一方で、人的資本経営に関するガバナンス体制についても開示が進み、専用の会議体やCHRO(最高人事責任者)などの機能を設置している企業が増加している。これらの体制を持たない企業は減少し、全体の約4割程度まで低下した。

HRGLは、こうした開示や体制整備の拡大が、従業員活躍を支える企業文化の醸成や、企業価値の向上に寄与すると考えられるとし、今後も全社的な取り組みやモニタリング体制の確立が企業の「稼ぐ力」の強化につながると指摘している。
なお、調査対象企業は次のとおり。

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