オープンワークが発表した2025年の「働きがいのある企業ランキング」で第1位を獲得した株式会社電通。何年もかけて、組織風土や働き方の根本的なアップデートに取り組み、従業員体験を高めてきた結果だという。しかし、社内に染みついている組織風土や働き方を変えるのは容易ではない。どのような取り組みが実を結んだのだろうか。本記事ではイベント「HRzine Day 2026 Winter」でその点について紹介した、dentsu Japan デピュティ チーフ・ピープル・オフィサーの佐藤淳氏によるセッションの模様をお伝えする。
働きがいのある企業ランキングで第1位、幅広い層から高評価
グローバルに事業を展開する電通グループにおいて、日本での事業活動を担う約140社、2万4000名を総称する事業ブランドとして機能するdentsu Japan。その中核を担う株式会社電通は、1901年に創業し今年で125年目を迎える歴史ある企業だ。同社はいま、広告やマーケティングの枠を超え、より広い領域からクライアントの成長をサポートするとともに、社会全体の成長に貢献する「IGP(Integrated Growth Partner)」への進化を掲げて歩みを進めている。
佐藤 淳(さとう あつし)氏
dentsu Japan デピュティ チーフ・ピープル・オフィサー
株式会社電通コーポレートワン 執行役員(人事担当)
1999年に新卒で株式会社電通へ入社。16年間、ビジネスプロデュース部門で様々なクライアントを担当。その後、電通アイソバー株式会社の取締役を経て、2018年より株式会社電通の人事局へ。2022年に株式会社電通コーポレートワンの人事オフィス長。2024年より同社執行役員。2025年よりdentsu Japan デピュティ チーフ・ピープル・オフィサー。株式会社電通を含む国内の電通グループ約140社の人事を統括する。
この大きな事業変革期において、電通はオープンワークが発表した「働きがいのある企業ランキング2025」で第1位を獲得(2026年は第2位)。また、この数年にわたり若手社員、転職者、管理職など幅広い層から高い評価を得てきた。その背景には、どのような取り組みがあったのだろうか。佐藤氏は6つのアプローチに分類して説明を始めた。
事業変革と「働きがい」を支える柔軟な労働環境
まず1つ目のアプローチが「多様で柔軟な働き方を実現する」である。電通では、月平均の1人当たり法定外労働時間を2016年の26.9時間から、2023年には9.0時間へと大幅に削減することに成功。これを実現するため、会社、外出先、自宅、サテライトオフィスという4つの場所での勤務を可能とし、全社的にスーパーフレックス制度を導入した。また、22時から翌朝5時までの業務を原則禁止とする労務管理の徹底に加え、四半期に1日付与される特別休暇「リフレッシュホリデー」や有給奨励日の設定など、十分な休息を取るための仕組みも整えられた。
男性の育児休業取得も強く支援している。2024年の取得率は103.1%に達し、日本の平均を大きく上回る水準を実現。取得日数も前年から18日増加し、平均67.1日となった。この背景には、出生届が提出された際の本人への制度案内や、有給の特別休暇「子の出生休暇」の存在がある。しかし、それだけで取得日数が増えるものではない。
「本人への推奨と同じくらい大切なのが、取得しやすい職場の空気づくりだと考えており、具体的には管理職に対して案内を行っています。ただ同時に、社員にもなるべく早く届け出を行うように周知をしています。管理職が育休者の抜けた穴を計画的に埋められるようにするためです。こうした取り組みの結果、多くの社員が育休を取得するようになり、その後の社員も取得しやすくなるという好循環ができていると考えています」(佐藤氏)
さらに、これらの労働環境改革と両輪をなしているのが「HRMディレクター」という独自の人事役職の存在だ。約50人から100人規模の「局」という組織単位に1人配置されたHRMディレクターは、労務管理や見守り、人材育成支援を専任で行い、現場の社員に伴走している。2024年には彼らを支援する「HRM Coディレクター」も新設され、サポート体制はより強固なものとなった。
「制度を整備しても、それを社員が活用できなくては意味がありません。電通ではこのHRMディレクターがいることで、整備した制度が社員に届きやすい環境になっているのではないかと考えています」(佐藤氏)
労働時間削減のもう1つの鍵が、AIなどを活用した日常業務の効率化である。労働環境改革の際も業務の棚卸しと見直しを行ったが、今も日常業務を効率化するためにAIなどの活用を推進しているという。具体的には、社内プラットフォーム「Smart Work Concierge」を通じ、AIチャットボットによる質問対応、翻訳、リサーチ、資料作成、議事録作成などが日常的に行われている。
こうした取り組みと成果は、外部からも認証という形で評価されている。女性活躍推進企業の証である「えるぼし」、優良な子育てサポート企業の証である「くるみん」、そしてLGBTQ+の人にとって働きやすい企業の証である「work with Pride」などを取得した。
さらに、労働時間が減ることで生まれた余白は、社員の多様な「社外活動」へと還元されている。2024年度の年間申請数は約1800件にのぼり、大学講師、キャリアコンサルタント、映画監督、ミュージシャンなど、社員は本来の業務に支障をきたさない範囲で個人の才能を社外でも発揮している。
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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
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