組織の垣根を越えた掛け算とDNAのアップデート
5つ目のアプローチ「個やチームの掛け算を無限に生み出す取り組み」では、3つの取り組みが行われている。
まず、dentsu Japanの約30社、500人以上が参加する「dentsu Japan 合同新入社員プログラム」である。基本的には個社ごとに実施される新入社員研修。しかし、会社を越えた掛け算を生み出すためにはお互いを知ることからということで、グループ合同のプログラムとして設けている。入社直後のタイミングで自身が電通グループの一員であると認識し、他社の同期とつながりを持つことで、個社を超えたマインドセットを早期に形成する。
また、キャリアの流動性を高めるための「dentsu Japan オープンキャリアプログラム」も導入された。これはグループ会社を横断した出向型の公募プログラムで、社員のキャリアフィールドをdentsu Japan全体へと広げる役割を果たしている。佐藤氏は「dentsu Japanにはたくさんの会社があるので、公募をきっかけに他社の業務内容に興味を持つ社員が増えていってほしい」と述べる。
もう1つの取り組み「IGPアワード」は、IGPを体現する仕事や、クライアントと社会の成長と活気を生み出す仕事を称えるための、dentsu Japanを横断したアワード。個社の枠を超えて、個やチームの掛け算を生み出し、挑戦していくカルチャーを醸成しているという。
そして6つ目のアプローチが「電通のDNAをアップデートする取り組み」である。この取り組みの柱となっているのが、「dentsu Leadership Attributes(dLA)」だ。グローバル共通で定められたこの指標は、リーダーに求める6つの行動規範を示している。
「当社では、リーダーシップを『自分の周りへポジティブな影響を与える行動』と定義しています。また、リーダーシップは管理職のような一部の社員だけのものではなく、すべての社員に求めるものであると定義しています。業務のパフォーマンスや成果はもちろん大切ですけれども、それと同じくらいリーダーシップも大切であると社員に向けて発信しており、このdLAの存在が我々のDNAをアップデートするきっかけになっていると考えています」(佐藤氏)
また、コロナ禍で中止されていた「創立記念日」のイベントは、電通のカルチャーを見つめ直す重要な機会と位置付け、内容をアップデートして開催している。
一度休刊していた社内報も、社員参加型のWeb冊子『社報 電通人』として2024年に復活。従来は会社からの伝達を目的に発行されていたが、取材や寄稿を通じて社員でつくり上げる社内報に生まれ変わり、社員から親しまれるようになったという。
さらに、社員同士の交流を促進する「ハッピーアワー」も開催されている。夜だけでなく、より多くの人が参加できるよう昼間のランチバージョンも用意され、500人以上が参加する盛況ぶりだ。
「社員の皆さんにとって、改めてリアルで会って話すことの価値、意義を感じる場になってほしいと思っていますし、こういった場を通じて仲間と分かり合い、あるいは称え合うカルチャーの醸成につながればと考えています」(佐藤氏)
電通の「働きがい」は、決して単一の施策によってもたらされたものではない。労働環境の抜本的な改善という土台の上に、経営層と社員の距離を縮めるためのオープンな経営、個人・チームの成長と組織を越えた掛け算を促す仕組み、そして、全社員にリーダーシップを求めるというDNAの再構築が複層的に絡み合って実現されている。これらの取り組みは、硬直化した組織運営に課題を感じている企業にとって、大いに参考になるものと思う。
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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
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