オープンな経営で経営層と社員の距離を縮める
2つ目のアプローチとして佐藤氏が挙げたのが、「オープンな経営を推進する」である。従業員エンゲージメントを高めるうえで、経営層と社員との距離を縮め、会社の方向性を共有することは極めて重要だ。電通では、佐野傑社長(セッション当時)の就任以降、経営層からの発信をより積極的に行っている。
社内向けの施策として象徴的なのが、「オープントーク」と「シェアリングミーティング」という対話会の実施である。2024年には電通で67局、dentsu Japan全体で17社・約5000人の社員が参加し、経営層と直接対話を行った。自社で働く意義や会社の目指す方向性について語り合うことで、組織全体への共感や理解、期待感を醸成している。
また、かつては管理職限定であった「ビジネス情報会議」を全社員向けに開放したことも大きな変化だ。
「もともと管理職向けに開催していた会議ですので、重要な情報も多く含みますが、事業目標の達成に向けては、社内の重要な情報や事業に関する情報を分け隔てなくタイムリーに共有するほうが重要であるという考え方に立っています。特に、社員の数が多くなるほど、経営陣が発する言葉をダイレクトに届けることが重要であり、その観点でも意義があると考えています」(佐藤氏)
このオープンな姿勢は、社員の家族にも向けられている。社員とその大切な方々をオフィスに招く「オフィスカミングデー」では、約3300人の従業員とその「大切な人」が来場し、経営陣自らがもてなす側として参加者を出迎えたという。
同時に、メディア露出やイベント登壇、新聞広告などを通じて、同社のビジョンや戦略、目指すべき姿を社外に発信。世間に広く自社のことを知ってもらうことに加え、経営層のメッセージが社員に届くことを狙う。
個人と組織の成長を支える取り組み
3つ目のアプローチは、「個人の成長を支える取り組み」である。dentsu Japanでは人材育成とナレッジ共有を支える動画型研修プラットフォームを運営し、コンプライアンスから業務関連知識まで500本以上のコンテンツを全社員に提供。各自のキャリアの段階や関心に応じたコンテンツへ効果的・効率的にアクセスできるようにガイドも設けている。
また「自己アップデート支援」として、dentsu Japanが目指す姿を実現するために必要な専門性の獲得や、ビジネスパーソンとしての基盤の底上げにつながるテーマについて、学習や資格取得を支援。人材育成投資も大幅に増加させた(2023年から2025年で5倍以上)。この取り組みでは特に、社員が課題感を持ち、自らの意思で学ぶことを尊重しているという。
加えて月1回、30分程度の「1on1」を、部下の継続的な成長を実現するべく上司が伴走するためのコミュニケーションインフラと位置付け、実施している。
そのほか、1人ひとりのパフォーマンスとリーダーシップを多面的に見立て、そのポテンシャルや育成課題を議論しながら、今後のキャリアや成長機会につなげていくディスカッション「dentsu People Discussion」を行っており、社員へのさらなる成長機会として選抜型研修なども提供している。
4つ目のアプローチである「チームの成長を支える取り組み」では、AI、DX、顧客体験などさまざまなテーマの専門ユニットチームを戦略的に創設することで、部署はもちろん、会社も横断する形でグループの力を結集させている。たとえば「dentsu creative intelligence」は電通と電通デジタルが立ち上げた横断組織であり、AIなどのテクノロジーを活用して、創造性の拡張とクリエイティブ効果の最大化の両面から研究開発・実装を推進している。
また、特定のテーマや社会・市場の変化に対して専門性を持つメンバーが部門や会社の枠を超えて集まり、調査・研究・実践を行う「ラボ」も運営されている。多くのラボは、広告やマーケティングにとどまらず、事業開発、商品、サービス設計、組織や社会の変革支援まで視野に入れて活動しており、生活者理解を深めることや、新しい価値・ビジネスを創出することを継続的に行っているという。
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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
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