4つの歯車は「聴く」から設計しない
VoEサイクルは、4つの歯車で回ります。
- 聴く:声は、取りに行く
- 読み解く:数字の裏を掘る
- 動く:声を仕分け、手を打つ
- 返す:変化を社員に届ける
4つがかみ合って初めて、社員に「声を出してよかった」「答えたら何かが変わった」という実感が生まれます。一般的な従業員サーベイは「聴く」から設計します。いつ実施するか、どんな質問を立てるか。
私が提案するアプローチは逆です。いつ、どのような形で社員に変化を伝えるかを先に決め、そこから逆算してサイクル全体を組み立てる。「返す」をおろそかにした瞬間に社員の信頼は崩れ、次のサイクルで声は出てこなくなるからです。
設計は「返す」から逆算して行いますが、実際の運用は「聴く・読み解く・動く・返す」の順に進めます。以下、実務で回す順に見ていきます。
聴く:声は取りに行く
「いつでも言っていいよ」と待っていて届くのは、よほどの不満を抱えた人か、もともと発言をためらわない一握りの声だけです。飲食店の口コミサイトを思い浮かべてください。書き込むのは大満足した人か強い不満を持つ人で、「まあ悪くなかった」という大多数の声は、こちらから聞きに行って初めて見えてきます。組織も同じです。黙っている多数派の中にこそ、聴くべき声が埋もれています。
読み解く:数字の裏を掘る
声を集めても、スコアを眺めて終わる企業は少なくありません。数字は「何が起きているか」を教えてくれますが、「なぜ起きているか」は声を読み解いて、初めてつかめます。
私の前職コンカーでは、あるとき30代前半の社員のスコアが目立って低く出ました。そこで、この年齢層から課題意識の強いメンバーを集めてワーキンググループを立ち上げて理由を探ったところ、「自分は貢献している」という手応えと実際の処遇とのずれが見えてきました。この気づきをもとに、年齢ではなくビジネスへの貢献度を軸に役職や報酬を見直した結果、翌年以降、30代前半社員のスコアは目に見えて上がっていきました。「なぜ」を掘らないまま研修や福利厚生といった表層の施策を打てば、「やはり分かっていない」という失望を生むだけです。
動く:声を仕分け、手を打つ
集めた声のすべてに応えることはできません。コンカーでは、声を4つのボックスに仕分けていました。すぐに動ける「クイックウィン」。時間はかかるが道筋を示す「ロードマップ」。やらないと判断し、理由を誠実に説明する「フェアプロセス」。個別には応答せず傾向だけつかむ「パーキング」。
最初のサイクルでは、抽出した課題テーマのうち、実際に施策として動かすものは2割程度で十分です。全部やろうとして何一つ動かせないのが、最悪の結果だからです。社員が見ているのは施策の数ではなく、「声を出したら、何かが変わった」という事実です。
返す:変化を社員に届ける
声を聴き、読み解き、施策も動かした。それでも、返さなければ聴いたことにはなりません。動いたことが社員に見えていなければ、動いていないのと変わらないのです。実務のコツは、サーベイを始める前に「返す日」を決めてしまうことです。
たとえば7月の全社ミーティングで結果を伝えるなら、6月に経営判断、5月末に分析完了、実施は4月下旬から5月上旬、と逆算する。この一連の流れで、1つのサイクルが完結します。施策がすべて完了するまで待つ必要はありません。何に着手し、何を見送り、なぜそう判断したのか。その判断を伝えることが「返す」です。
返すのは、施策の進捗だけではありません。なぜその判断をしたのか、経営にはどのような制約や優先順位があるのか。その背景まで伝えることが、現場と経営のあいだに双方向の通り道をつくります。最初は、60日から90日で一巡させることを目安にしてください。
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- この記事の著者
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三村 真宗(ミムラ マサムネ)
株式会社U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPO
慶應義塾大学卒業後、創業メンバーとしてSAPジャパン株式会社に入社。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベタープレイス・ジャパン株式会社などを経て、2011年に株式会社コンカーに参画。代表取締役社長として、社員一人ひとりの声を経営に活かす組織づくりを徹...
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