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エンジニアに社外へ発信してもらうには
――現在では積極的に社外へ発信されている御社のエンジニアですが、最初はどうだったのですか。
最初の1人は大変でした。ぜひ社外で登壇してきてほしいというデータサイエンティストがいまして、その人にお願いをしたのですが、あまり前向きではありませんでした。そこで、弊社の社長以下、役員も資料作りのフォローや講演の練習など「伴走」をして、いわば社を挙げて送り出しました。
その後、マネジャーや役員といった上の人間から講演などに出てもらい、「話の型」を作りました。そして「こういう型なら話せる」という人に引き継ぐようにしたのです。やはりマネジャーや役員は話が得意ですから。これで、現場の人たちも登壇しやすくなりました。
しかし、外部の大きめなメディアやイベントなどには、役員などの名の通った人やキャッチーな成果を出したメンバーばかりに声がかかりがち、というのが実際のところです。メディアなどから獲得した講演枠の一部をメンバーに回すといったこともしますが、若手は機会がずっと限られてしまう。また、若手同士でも「あの人が出るなら自分も出たい」ということがあります。
そこで、若手には自社ブログに寄稿してもらうなどしています。ところが、そうして若手が書いたブログ記事が反響を呼び、はてブでマークが600もつくことがあったりするんですね。すると「新人、すごいな」みたいなことが起き、「負けてられないぞ」と切磋琢磨が始まる。よい刺激になっています。
――なるほど。1人が発信すれば他のエンジニアが刺激を受けるきっかけを生み、さらに発信するエンジニアが増えていくと。
キーワードは「ボトムアップ」や「現場発」だと思っています。エンジニアのことはエンジニアがいちばん詳しいわけですから、いかにして彼らのやりたいと思っていることを引き出すか。そして、引き出した先にいかにして場を作るかが、コーポレートスタッフの役割だと思っています。
我々の組織は広報コミュニケーショングループというのですが、コミュニケーションと入っているのは、エンジニア組織にとってソフト面でのサポートやフォローが大事だという思いがあるからです。
――トップダウンではなく、コミュニケーションを通じて現場に空気を作るわけですね。
「この人が出たのだからあなたも出ようよ」と頼むよりも、「出たあの人は格好いいよね」と話すとよいと思います。リクルートには、人から言われて動くということが避けられがちという風土もありますので(笑)、うまく出るように雰囲気を醸成することが肝だと思っています。このチューニングは、内部でも頻繁に議論しています。「これだと言いすぎだね」とか「これだと直接的すぎるよね」みたいに。あくまでボトムアップで、社外に出て行く気持ちを引き出すことに注力しています。