発表された洞察は、一般社団法人日本CHRO協会が企業の人事・人材部門を対象として2019年6月に実施した調査「人事・人財データのデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに関する課題」、およびIDCとワークデイが香港、オーストラリア、シンガポール、日本、韓国、マレーシア、タイ、ニュージーランドの1000人近くのDX、人事、IT、財務分野の経営層・管理職層(日本からは約250名)を対象として2019年に行った調査「APAC地域におけるDX化の障壁(Digital Dysfunction APAC survey)」を参照して出されている。
日本CHRO協会の調査では、人材情報のデジタル化(システム化)によって実現したいこととして、60%の企業が「人材配置や組織編成など経営の意思決定の支援」を挙げたという。人材配置や組織編成といった経営意思決定にHRテクノロジーをすでに活用、もしくは活用予定と回答した企業は61%で、人材情報のデータの可視化の対策を開始していると回答した企業も68%に上った。
また、人事・人材情報のデジタル化で重点を置く分野としては、人材情報の可視化(68%)、後継者育成(67%)、評価制度(62%)、ダイバーシティの取り組み(57%)、教育制度(57%)などの項目に多く回答が寄せられたことから、DXを活用した人材管理・人材育成に関心が高いことが判明。ただし、すでにデジタル化済みの分野については、勤怠管理(80%)と給与(78%)が突出し、それ以外の分野ではデジタル化が進んでいない実情も明らかになっている。
今後、DX化の対応・推進を予定する分野として挙げられたのは、後継者育成(71%)、キャリア育成(68%)、タレントマネジメント(68%)、オンボーディング(63%)、採用(60%)、教育やラーニング(56%)、ワークフォースプランニング(53%)。人事・人材に関わる広範囲のエリアでデジタル化へのニーズの高まりが見て取れるとする。
一方、IDCとワークデイの調査では、経営幹部層の60%が「現在のDX化の進捗や成果に課題があると意識している」と回答。その原因として次の項目が多く挙げられたという。
- 社内の部門を横断して活用できる共通のテクノロジーや共通の評価基準・指標の欠如(44%)
- DX化の投資対効果(ROI)の算出に苦戦(45%)
- 社内の部門間の隔たりが障害となっている(43%)
そのほか、日本CHRO協会の調査では、人材管理のデジタル化に対する課題や障壁として、投資コストや予算の確保(69%)、推進する人材の不足(63%)に回答が集中。加えて、人事制度や組織体制など見直すべき課題や問題(56%)、戦略や目的と目標が不明瞭(35%)が障壁として意識されている。
これに対し、IDCとワークデイの調査では、経営層は「経営層レベルのデジタル化へのコミットメントが重要である」(38%)と認識しており、日本CHRO協会の調査でも33%が「役員がDX化の推進を促進している」と回答。しかし、日本CHRO協会の調査で「役員によりDX化へのコミットメントの度合に差が生じている」との回答が43%を占めるなど、社内のDX推進における経営層と部門担当者レベルの間に認識のギャップが存在すると、ワークデイは分析している。
なお、この洞察に対し、ワークデイ 社長執行役員の鍛治屋清二氏は「北米やヨーロッパに比べ、日本はHRテクノロジーを経営に活かす動きが遅れている。企業のDXを成功に導くためには、経営層、人事、財務、IT部門などの間にある情報の隔たりをなくして全社レベルで取り組むとともに、人事・人材に関するデータを1つのクラウドシステムにまとめることが必要。それを実現するため、経営層によるコミットメントの下、人材管理に関するシステム投資について真剣に検討し、適切な計画を立てることが非常に重要である」といった趣旨のコメントを出している。