マネージャーのいない組織
――御社の新しい人事制度「Natura」について、簡単にご説明いただけますか。
釣巻創氏(以下、釣巻):弊社が目指す組織像として「自律・分散・協調」というものがあります。これをベースとして社員個人の幸せを実現し、会社としても成長しつつ世の中を良くしていきたいと思っています。ですので、前提として個人が自律・分散・協調して働けるような組織を、弊社は目指しています。
これを目指すための1つの形として「Natura」という人事制度を昨年10月に始めました。旧制度から大きく変わったところは、マネージャーを撤廃し、代わりに「カタリスト」という役割を設けた点です。また、360度評価の徹底、2対1の面談で個人の成長を支援するDS(Development Support)と呼ばれる制度、さらにはバンド制への移行なども大きく変化したところです。
――それまではマネージャーを中心とした階層構造の組織だったのですね。どうして制度変更に踏み切ったのですか。
釣巻:マネージャーがいることで、いろいろ弊害が生じたのです。例えば、部下の評価の不透明さだったり、権限が集中することで部下の自律的な動きが鈍ってしまったりといったことです。特に評価に関しては、全員が360度評価をすることで、権限の委譲や自立した判断が可能になると思い、大きく制度を変えました。
――マネージャーがいると、最終的な責任がマネージャーにあるという感覚に陥り、「自律・分散・協調」という価値観から離れてしまいがちです。そういうことが課題としてあったのですね。
渡辺悠太(以下、渡辺):そうですね。また、弊社の特徴なのですが、新卒社員が多い構造になっています 。そのため、彼らの面倒を見るマネージャー層に大きな負担をかけていました。成果を出すことはもちろん、評価や成長支援でも、マネージャー層に依存していたわけです。そこで、個々が互いに支援し合う形になることを期待して、マネージャーを撤廃しました。さらに、責任が全体に分配されることをNaturaの中で明文化しました。
釣巻:今まで誰も明文化していなかったからこそ、最終的な責任はマネージャーにあるという暗黙的な意識が皆の中にありました。Naturaでは「それを全員で受け持つ」ということをあえて明確にしたのです。それにより誰かがやるのではなく、みんなでやろうという意識が芽生えてきています。