いかに「日本を好き」になってもらうかが採用のカギに
――スリマさんはCogent Labsの人事採用マネージャーですが、ご自身、日本で活躍している外国人人材でもあります。現在の仕事についた経緯などをお聞かせいただけますか。
マルコ・スリマ氏(以下、スリマ):来日して15年目ですが、永住権も取得しています。最初はファッションの仕事で、パリコレクションのモデルとして来ました。それで5年ほど活動した後、キャリアチェンジして企業の採用リクルーターの道に進みました。これも最初はファッション関連で、外資系ネット通販のファッションサイトでマーチャンダイザーの採用などを手がけました。その後、大手外資系ベンダーの採用マネージャーを経て、現在は当社で海外の人材採用を担当しています。採用の仕事に携わってから、もう10年を超えました。
――一方、ラマルさんは1年半前に来日・入社されたそうですね。「ネイチャー」誌に論文を発表されるなど、AI領域の研究者・技術者としてすばらしい実績をお持ちと伺いました。
ティアゴ・ラマル氏(以下、ラマル):ドイツの大学で物理学関連の学位を取得して、Cogent Labsに入社する前は、英国・ロンドンにあるDeepMindに勤務していました。研究のテーマとしてはニューラルメモリや概念学習、不確実性などで、それが現在のAIのリサーチ業務につながっています。
――DeepMindといえば「AlphaGo」などで世界的に著名なAI企業です。あえて日本にまで来てCogent Labsに入社しようと思ったのはなぜですか。
ラマル:当時から私はAIのリサーチ業務に携わっていたのですが、 DeepMindのリサーチ対象はAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)に絞られていました。しかし、私自身は、もっと広い分野で自由に研究したいという思いがあったのです。
具体的には、現在のリアルワールドの問題に直接関わるAIを手がけてみたかった。AGIは50年後、100年後を目標に描きますが、私としては、いま現在何らかの課題を抱えているお客様の役に立つ技術の領域に強い関心を持っていました。そこでCogent Labsに応募して、自分が本当にやりたいことと日本の職場で得られることとをすり合わせながら、転職するかどうかじっくり話し合っていったのです。
――Cogent Labsに応募した時点で、来日する意思を持っていたのですか。
ラマル:いえ、日本に来たことはなかったので、文化の違いや家族をどうするかといったことでずっと悩んでいました。
スリマ:当社としても、どうやって日本を好きになってもらうかが重要なカギだと考えました。そこで内定を出す前に、当社のCEOが「とにかく一度、日本に呼んでみよう」と言って、ティアゴ(ラマル氏)に来日してもらったのです。そこで仕事の話はもちろん、花火見物など東京のすばらしい所をいろいろ経験してもらった結果、日本に来る意思がほぼ固まったと本人から聞いています。まったく経験のない国に招くからには、会社は責任を持たないといけません。その意味でも、お互いに100%納得した上で来てもらうことが大切だと考えています。