新型コロナウィルスの感染拡大により多くの企業が業績予想を下方修正、あるいは倒産する現在の事態が、新入社員の意識にどのように影響しているのか。同社では、2020年度に入社した新入社員3128名を対象に意識調査を実施し、過去の調査結果との比較分析を行った。同調査は、同社がトーマツ イノベーション(2019年4月にラーニングエージェンシーに社名変更)として活動していた2014年から毎年実施しており、前回調査(2019年4月発表)に続いて今年で7回目となる。
同社が伝える調査の結果は以下のとおり。
「今の会社で働き続けたい」新入社員の割合が59.1%と5年ぶりに上昇
今の会社での勤続意向について聞いたところ、59.1%の新入社員が「できれば今の会社で働き続けたい」と答え、5年ぶりに上昇した(図1)。2016年度以降、新入社員の就社意識は年々低下し、昨年は全体の半数ほどに低下していたが、今年は一転して6割近くまで上昇した。
同社が実施した新入社員研修の参加者からは、「社会人生活が在宅勤務からスタートし、社会人らしさを感じられず不安」「新入社員研修後から自宅待機となり、いつまで続くか不安」といった声が上がる。こうした先行きへの不安の裏返しからか、今の会社で働き続けたいと思う新入社員の割合が大きく増加した。
「いざというときのために」専門性を高めたい新入社員の割合が調査開始以来最高の54.6%
「将来会社で担いたい役割」を問う質問に対して、組織を率いる管理職や経営者などではなく、「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」と答えた31.1%の新入社員に、その理由を聞いたところ、「いざというときに専門性を活かして仕事をしていきたいから」が54.6%となり、調査開始以来、最も高い割合となった(図2-1)。新型コロナウイルスの感染拡大の中、不安を抱えながら、もしものときに備えて専門性を磨いておきたいと志向する新入社員が増えたと考えられる。
また、「今後どのような仕事をしていきたいか」という質問に対しては、昨年同様、「楽しくてやりがいのある仕事(73.1%)」が最多となった(図2-2)。伸び率で見ると、「広範囲なスキル・知識が求められる仕事(21.2%)」が昨年の約2倍に。「いざというとき」のために専門性を高めておきたいと考えるのと同様、広範囲なスキル・知識を身につけることで環境の変化に対応できるようにしておきたいという意識がうかがえる。
「上司に相談する機会」を求める新入社員の割合が調査開始以来最高の48.8%
「キャリア形成支援について会社に期待することは何か」という質問では、「上司に相談できる機会をつくってほしい」が48.8%と昨年から10ポイント近く伸び、過去最高を記録した(図3-1)。また、「上司以外の社員に相談できる機会をつくってほしい」も29.7%と、調査開始以来最も高い割合を示した。在宅勤務や自宅待機によって対面でのコミュニケーションを取る機会が少なく、今後に対する不安も抱えていることから、上司や先輩社員に相談できる場を求める新入社員が増えたのではないかと推測できる。
また、どのような状況なら今の会社で働き続けようと思うか聞いたところ、「職場の人間関係が良い」状況なら働き続けたいと答えた新入社員が66.6%と最多だった(図3-2)。在宅勤務や自宅待機、プライベートでは外出の自粛など、職場に限らず人と接する機会が減っていることもあり、人間関係を重視する傾向が表れたのではないかと考えられる。
就職活動については変化が見られず
なお、就職活動に関する質問については、新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前の時期に就職活動を行っていたためか、過去の結果と大きな変化は見られなかった(図4-1、図4-2)。状況が激変したことで、新入社員の意識に変化が起きた可能性が高いと推測される。