ワークポートは、「女性活躍推進と仕事の価値観」に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査対象:当社を利用している全国のビジネスパーソン(20代~40代・女)
- 有効回答:130人
- 調査期間:2022年4月19日~4月26日
- 調査方法:インターネット調査
【女性活躍推進の取り組みへの印象】93.8%が女性が活躍できる職場は魅力的と回答
働く女性が「女性活躍推進」に関してどんなイメージを抱いているのかを知るために、対象者全員に女性が活躍できる職場は魅力的か聞いたところ、「とても魅力的」が63.8%、「やや魅力的」が30.0%と、「魅力的だ」と回答した人が93.8%に上った。
「魅力的だ」と回答した人に理由を聞いたところ、「有能な女性がしっかり長く働け、給与面での心配がなくなるから」(40代・システムエンジニア)、「子供ができたときに仕事も両立できるため」(30代・企画)などの意見が挙がり、「女性が活躍できる=ライフイベントが発生しても長期的に働きやすいイメージ」を抱く人が多いことが分かった。また、「意見を言いやすい雰囲気があるから」(40代・製造)、「女性であることに負い目を感じることがないのは良い環境だから」(40代・保守運用)など、男女差別がないゆえに、働く一員として意見を言いやすくなるという声も上がった。
他にも、「女性だからとキャリアアップを諦める必要がないのは女性にとって自信に繋がると思うから」(40代・企画)、「自分にもチャンスがあり、実績をあげれば評価されると思うから」(40代・事務)など、女性が活躍できる環境は働く上でのモチベーションアップにもつながるようだ。
また、「女性活躍の職場と全面に押し出す会社であれば、女性だけではなく、男性も子育てや介護に協力できる環境が考えられるのではないかと思うため」(40代・企画)、「性別に関係なく社員が活躍できる環境は魅力的で、女性が活躍する職場は社員を大切にしていると思えるため」(40代・管理系)など、女性が活躍できるということは、男女問わず誰にとっても働きやすいのではないかという意見も挙がった。
働く女性の中には、女性であるがゆえに不当な扱いを受けないか、妊娠・出産などライフイベントが発生してもキャリアを諦めずに働けるか、など働き方に関して不安を感じている人も少なくない。女性活躍推進はそれらの不安を解消するもので、積極的に取り組んでいる企業では長期的に働ける印象が強いため、より魅力的に映るのではないだろうかと同社は述べている。
【職場の女性活躍推進の実態】59.2%が今の職場は女性が活躍できる環境だと実感
対象者全員に、現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)は女性が活躍できる環境だと感じるか聞いたところ、「活躍できる環境だ」と回答した人が59.2%と半数を超えた。
「活躍できる」と回答した人に理由を聞いたところ、「年収も昇格も男女に差別はないから」(40代・営業)、「業務内容や決済権に、男女の区別がないため」(40代・管理系)など、男女平等に働け、評価されるという意見が多く挙がった。また、平等に評価されるからこそ、「取締役に女性が1人、営業、制作にも女性役職者が活躍しているから」(30代・企画)、「管理職や役員の女性割合が高いから」(40代・管理系)など、女性管理職の存在を女性が活躍できる証として挙げる人もいた。
他にも、「産休・育休制度が充実しており、復職率も高いため」(30代・管理系)、「内勤業務かつ産休育休、時短勤務などの制度もあるため」(30代・コールセンター)など、福利厚生、勤務制度の充実により、仕事も家庭も諦めることなく長期的に働きやすいという意見もあった。また、「社員の9割がワーママだから」(40代・企画)、「育児をしながら仕事をしている子育て世代が多いから」(30代・企画)など、仕事と子育ての両立を実現しているロールモデルの存在も女性活躍の実感につながっているようだ。この結果から働く女性の多くは、女性管理職の割合が多いかどうか、昇給や昇格が男女平等であるかどうか、産休育休取得や子育てとの両立がしやすい環境であるかどうかという観点から、女性が活躍できる環境かどうかを判断していることが分かったという。
【女性管理職比率と希望度】現在管理職でないと回答した人の半数以上が管理職を希望せず
女性活躍を示す数値として扱われる女性管理職比率。回答者自身は管理職についているのか、ついていない場合、今後のキャリアの中で目指しているのかを調査。まず、対象者全員に現在管理職についているか聞いたところ、大多数を占める83.1%が「管理職についていない」と回答した。
また、「管理職についていない」と回答した人にこれから管理職につきたいと思うか聞いたところ、「管理職につきたくない」という回答が56.5%と、半数を超えた。
管理職につきたくない理由を聞いたところ、「管理職になると残業が増えそうだから」(20代・医療)、「ワークライフバランスを崩したくないから」(30代・化学系エンジニア)など、仕事だけでなくプライベートも充実させたいため、残業の多い管理職につくことを敬遠する意見が挙がった。「業務量を考えると、家庭との両立が難しいと感じるため」(40代・事務)など、仕事と家庭・子育て・介護などの両立が難しくなることを不安視する意見も多数挙がった。
また、「専門職のため、技術を伸ばしたいから」(30代・クリエイター)など、管理職よりもプレイヤーとして活躍するために専門性の向上に注力したいという人もいた。今回の結果では管理職を希望しない理由のほとんどが、管理職の業務量の多さから仕事の負担が増えることで、プライベートや家庭との両立が難しくなることを懸念するもの。現状の管理職の働き方にも課題があることが浮き彫りになったという。
【企業への要望】明確な評価制度・プライベートとの両立をサポートする福利厚生・女性管理職のキャリアプランの形成など働きやすさ向上を求める声が挙がった
女性活躍推進には魅力を感じつつも、女性管理職を目指すには気が引けるという働く女性の本音が分かった。では、企業にはどんな対応を求めているのだろうか。対象者全員に、女性活躍推進の取り組みで会社に希望することは何か聞いたところ、「男女に関係ない明確な評価制度および報酬、子育て世代や子育てシングルに対する配慮」(40代・コールセンター)、「性別でレッテル貼りをせずに本人の希望を汲んでほしい」(30代・管理系)、など、性別問わず正当な評価を望むという意見が多く挙がった。また、「女性管理職のキャリアプランの形成」(20代・製造)、「残業への考慮や出産などで休職しても昇給する仕組み」(20代・機械系エンジニア)など、女性も理想のキャリアが叶う制度を期待するという意見もあった。
他には、「時短勤務者でも裁量の大きい仕事ができる環境作り、意識改革」(30代・事務)、「残業時間の短縮、男性の育休取得推進」(20代・企画)など、家庭と仕事の両立がしやすいよう、時短勤務、リモートワーク、休業などの制度の充実を希望する声もあった。ただし、「産休育休の制度は良いが、独身や子離れ、子なしの人にしわ寄せがいくので人員補充をして一人当たりの仕事の負荷を考えるべき」(30代・企画)という意見もあり、出産・育児をする人に限らず、すべての人が納得して働けるシステムが必要だとする声もある。また、「女性活躍を女性だけの問題のように考えないでほしい」(40代・管理系)という意見もあり、女性活躍推進のためには男女問わず課題に向き合う必要があると捉え、女性や一部の社員に任せきりにしない環境整備を訴える人も少なくないことが分かったという。
【現在の働き方への満足度】自分らしく働けている人はわずか15.4%のみ 男女不平等に不満の声多数
女性活躍推進に対する女性の本音が分かったところで、働く女性は仕事に対しどんな価値観を抱いているのかを探った。まず、対象者全員に今、自分らしく働けていると感じているか聞いたところ、「自分らしく働けている」人は、わずか15.4%で、半数を超える53.1%が「自分らしく働けていない」と回答した。「どちらでもない」と回答した人は31.5%となった。
「自分らしく働けていない」と感じる人に理由を聞いたところ、「成果をあげられる仕事に手を挙げ、率先して進めて上手くいっても、男性社員にメインを交代するよう言われるから」(40代・事務)など、男性優位な職場環境だからという意見が挙がった。男性優位だからこそ、「自分のスキルや得意なことを活かせていないし、やりがいを感じられず人間関係も苦しいため」(20代・事務)、「業務に関する希望を伝えても叶わないから」(30代・管理系)など、自身のスキルを活かせる場を得られないことを不満に感じる人もいた。また、「成果を出したのに評価されなかったため」(30代・管理系)という意見もあり、正当な評価を受けていないと感じている人も少なくないようだ。他には、「常に仕事に追われている。お金のためだけに片っ端から仕事をこなしているだけだから」(30代・管理系)など、仕事のやりがいを見失っているという意見や、仕事に楽しさを見出だせない結果、「目標を持てない。将来を不安に感じるから」(30代・システムエンジニア)という回答もあった。
また、「どちらでもない」と回答した人に理由を聞いたところ、「自分らしく働けていない」と感じる人と同様、評価や業務内容に関する不満が挙げられた。たとえば、「やりがいはあるが、評価対象にされないから」(40代・事務)、「自分がやりたいことと会社から求められることがマッチしていないから」(20代・接客販売)など、「自分らしい働き方」の実現の裏側には、希望が叶う環境、正当に評価される環境があるかどうかという点が大きく関係しているようだ。一方で、「自分らしく働けている」と感じる人の理由を聞くと、職場でスキルや個性を尊重されるなど、「自分らしく働けていない」と感じる人とは対になる意見が集まったという。
【性別の壁】半数以上が働くうえで女性が不利だと実感 出世・昇給しにくい、発言権がない、妊娠・出産の有無問わずキャリアアップのチャンスがないという声も
自分らしく働けない理由として男女不平等を挙げる人がいた。そこで、回答者全員に、現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)で女性であるがゆえに不利だと感じたことがあるか聞いたところ、「不利だと感じたことがある」が半数以上の53.1%を占めた。
「不利だと感じたことがある」と回答した人に、どんなときに不利だと感じたか聞いたところ、「自分らしく働けていない」と回答した人の理由と同様、「男性社員同士(上司と部下)の方が話がしやすい雰囲気があり、新しい案件の話がきても情報が流れてこないとき」(40代・企画)、「発言権がなく、言いなりに業務をこなすしかできないとき」(30代・事務)など、男性優位のため対等に扱われない場面を挙げる意見が多く集まった。また、「男性社員と同じ成績だったが、女性は結婚・出産があるからとの理由で出世できなかったとき」(20代・事務)、「結婚・出産にあたり、女性だからすぐやめる、フルタイム稼働できないことを理由に、高度な案件やポジションを見送られたとき」(30代・営業)など、結婚や出産などを理由にキャリアアップや、仕事のチャンスを失ったという意見も多く挙がった。
他にも、「客先対応で女性だからと軽視されたとき」(40代・システムエンジニア)、「女性だからできないだろうという固定観念にとらわれた人と仕事をするとき」(40代・コールセンター)など、一部の男性の中で女性蔑視の価値観が根付いており、不当な扱いを受けるケースもあるようだ。中には、「事務作業を暗黙の了解で押し付けられたとき」(40代・製造)という回答もあり、「事務作業や雑務は女性がやるもの」というジェンダーハラスメントともとれるような扱いに悩む女性も少なくないという。
女性活躍が推進されつつも、実際には自分らしく働けていると感じることができない女性が多数いる現状が浮かび上がった。職場に男性優位の考え方が根強く残っているため、女性であることをハンデに感じる人もおり、女性活躍を推進していくためには男女問わず大きな意識改革が必要であるといえるのではないだろうか。いかなる状況であっても女性が安心して持続的に働ける環境は、女性社員のためだけでなく、企業の成長や長期存続のためにも必要。男性社員も一丸となって企業と働く女性の互いのニーズをしっかりとすり合わせた上で、ギャップのない対策や方針を決めていくことが大切なのではないだろうかと同社は述べている。
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