【③キャリア自律】実現のための「個人の意識改革」と「組織の環境づくり」
そして最後に「③キャリア自律」について、成瀬氏は「DXの人材戦略になぜキャリアの話が出てくるのか、疑問に思われることだろう」と切り出し、「今は技術知識だけ身に付ければよいというものではなく、一人ひとりが自分または自分の事業にとって学ぶべきことは何かを考え、自ら見つけ出して自ら決めて学んでいくことが重要になる。その前提に『キャリア自律』という考え方がある」と説明した。
「キャリア自律」は近年トレンドワードとしてもよく耳にするが、学びや学習意欲はもちろん、例えばエンゲージメントやパフォーマンス、仕事充実感など、企業が昨今気にすべき項目はいずれも、キャリア自律と相関していることが明らかにされている。
それでは、キャリア自律をどう上げるのかといえば、これもやはり「捉え方」から変えていく必要がある。つまり、DX人材育成における実践学習と同様に、経験学習サイクルの中で、キャリアのために行動をどう変えるか、その行動変容が自分にどのような意味があるのかを振り返り、内省する機会を持つことが重要だ。言い換えれば、自分のキャリア形成について考えたり、他者と対話したりする機会を増やすことが一番の近道だという。
こうした考え方のベースとなっているのは「プロティアンキャリア」という、社会の変化に応じて、自分の意思で自由に姿を変え、形成していくキャリアの考え方だ。そのために「キャリアを可視化し」「戦略的に計画を立て」「実際に行動」し、さらに「行動を振り返る」という内省サイクルを日々のキャリア支援に組み込んでいく。それが組織にできる支援策だという。
なお、パーソルではここでも数値化により、キャリアを可視化している。キャリア資産を定量的に表すために、生産性、活力資産などについて数値化し、その変化をみながら、自分が取り組むべきものは何か、示唆を受けるというわけだ。
成瀬氏は「キャリアは目に見えないものだけに、こうしたテクノロジーの力を使って“見える化”をすることで捉えやすくしている」と説明し、「さらには実際に学んだ人たちが、自律的に学び、そこから新しいチャレンジとしてキャリア選択をしてもらうことが大切」と語る。
そのときに重要なのが、会社の都合ではなく、自分たちでより高い専門性や別分野にチャレンジする状況を組織として作っていくということだ。この学びとキャリア自律の先に、キャリアの可能性を提示するような制度やキャリア選択の仕組みを用意していく必要がある。つまり、DX人材戦略は育成するだけでなく、その後も当人が主体的に学び、活躍できる場として、自分で選択できる環境を作ることが重要になる。